販売状況を見る限り、ミニバンは今もなお日本市場の主力であることは間違いない。しかし、ハイブリッドやダウンサイズターボなどのパワーユニットは別として、デザインや機能に新しさが感じられなくなってきているのも事実。
端的に言えばマンネリ化が進み、新鮮さが失われてきているという見方もできる。ここでは、そんなミニバンは今後どうなっていくのか元開発者の情報を元に予想してみる。ミニバンの先にあるのは成長か衰退か?
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大切なのは停まっている時のエンタメ性
「まず車種数は減っていく方向でしょう」トヨタで言えばアルファード/ヴェルファイアクラスの大型、ノア/ヴォクシークラスの中型、シエンタクラスの小型という3パターンは維持するものの、必要最小限のラインアップになっていくだろうという。
一つのカテゴリーに1車種が基本となり、各カテゴリーの中間に当たるモデルは淘汰されていくということ。実際、トヨタのアイシス、ウィッシュ、マツダのプレマシーなどは次期モデルが予定されていない。
「生き残るのはサイズに関わらずボックスタイプのミニバンで、モノフォルム系は衰退して行くでしょう。
大型ミニバンに関しては、日本市場を考えるとこれ以上ボディサイズを大きくすることは得策ではなく、スペース効率の向上に注力されていくことになります。
そのためにもボックスタイプが有力です」
また、スペース効率だけでなく、これからのミニバンで大切なのはエンターテイメント性だという。
「各メーカーがこれから力を入れるのは、車が停まっている時にどれだけ楽しさを与えられるかです。
例えば車内での食事も我慢ではなく楽しみになるような空間。そのためにはシートアレンジが重要になります。
1列目を回転させて2列目と向き合う形にできる車は間もなく出てくるでしょうし、3列目を使わない時には床下に収納し、2列目が超ロングスライドできるシートアレンジも各社やってくるでしょう。
1列目と2列目を向き合わせ、その間に十分な大きさを持ったテーブルを置けば部屋感覚で楽しめる。そんなミニバンが今後は出てくるのではないでしょうか」
オートキャンプでもテントではなく、車内で過ごせるくらいの快適性。これからのミニバンが目指すのはそういう方向性だということだ。
車内エンタメはそれだけには止まらない。なんとメーカーはミニバン車内での映画鑑賞さえも視野に入れているという。
「サイドガラスをスクリーンにして映像を見られる車です。
今でも車載モニターでDVD鑑賞するのは当たり前のようになっていますが、車を停めて、みんなで映画感覚で映像を楽しめるのがこれからのミニバン。
そのためのシートアレンジも工夫されていくでしょう」
次世代ミニバンの一つの方向性。それは停まっている時にどれだけ楽しませられるかだ。
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これからは2列シートのミニバンが流行る?
また、ミニバン=多人数乗車という概念も変わってくると言う。
「広い空間を活かしたパーソナルなミニバンというのも、これからの一つの方向性でしょう。あえて2列シートにこだわり、一人一人に快適な人を提供する車。
それぞれのシートにUSBとモニターがあり、飛行機のファーストクラスのように好きなことをしながらゆったりできる空間を提供する。
これは極端かもしれませんが、2列目は2座のカプセルシートとして、個室のような感覚を味わえる車も出てくるかもしれません。
間接照明などにもこだわり、極上のリラックスタイムを過ごせるというもので、こうなるとドライバーの立場がなくなりますが、どこが気持ちのいい場所まで自分で運転して行き、そこでリラックスタイムを楽しむという使い方ができるかもしれません」
もう少し先を見据えると、重要な技術となってくのが人工知能(AI)だ。AIは自動運転のための技術であり、また、車と乗員がコミュニケーションをとるための技術。究極的には車が家族の一員になるというものだ。
「ファミリーのための車であるミニバンは、AIによるコミュニケーションと親和性が高いと考えられています。
さすがにまだ先の話だと思いますが、現時点でもエンジニアはかなり具体的に乗員と車の双方向コミュニケーションを研究しています」
この先従来の常識では測れないミニバンが登場するかもしれない。