東京モーターショーの初日にサプライズカーとして登場したレクサスLF-FC。LSの後継車と目されている車で、売るのか売らないのかといえば当然売られることになる。しかしその内容があまりにも未来的で、この場合「本当にこのまま登場するのか」が論点になる。
攻撃的なデザイン
LF-FCはレクサス初の燃料電池車(FCV)で、しかも前輪をインホイールモーターで駆動する。Aピラーが思い切り寝かされたデザインは、いかにも空力が良さそうで、また大型のスピンドルグリルもふくめて「攻めの姿勢」を感じさせる。全長5300☓全幅2000☓全高1410mmと発表された大柄なサイズもあって存在感もバツグンだ。
各システムのパッケージングも実に興味深い。ボンネット下の通常エンジンが入っているところにFCスタックを置き、高圧水素タンクはそのスタック直後から前後方向に1つ、その後ろの左右方向に一つ配置される。後輪の駆動用バッテリーはリアシートの後ろ、そしてその下にモーターがおかれている。
コンセプトカーとはいえ、さすがの完成度だが、このまま市販化されるとは思いにくい部分もある。FCVは既にMIRAIを実用化しているだけに技術的には問題ない。しかし、生産規模がネックで、MIRAIの年間生産台数は今年末まで約700台、来年が約2000台、2017年以降は3000台程度の計画。徐々に増えるのは確かだが、欧米への輸出も始まり、相変わらず国内の納期は今申し込んでも19年以降という遅山なのだ。
そんな状態でレクサスLSをFCVとして売れるのかという疑問が一つ。もうひとつ、水素ステーションが少ないということもある。ホンダも来年3月にFCVのクラリティフューエルセルを登場させるが、こちらも小規模。この状況のなか短時間で飛躍的に水素ステーションが増えるとは考えにくく、インフラが伴っていない状態でレクサスのフラッグシップカーを売れるのか?
長い目で見れば、政府の方針もあり、20年頃にはインフラも充実していそうだが、現行レクサスLSの登場は2006年。実に9年間も現行型の販売を続けており、その間、欧州プレミアムカーに移行する既存ユーザーが続出。販売店としては一刻も早く新型車が欲しい状況であり「2020年まで待てば」などと悠長なことを言っていられないのが現実なのだ。
ハイブリッドも用意する
そこで考えられるのがFCVとともにハイブリッド(HV)も用意するという二面作戦だ。東京モーターショーで発表されたシステム構成の展示物を見れば、FCスタックの位置にエンジンを積むことは十分可能だし、また、床下中央に前後方向におかれている高圧水素タンクもそのままプロペラシャフトに入れ換えられそう。つまり、この車はこのままのパッケージでFCVとHVの両方を設定できる設計になっているということなのだ。
この場合、前輪の左右を独立して制御するインホイールモーターはそのまま使える。HV+インホイールモーターなら新しさもアピールできるし、もちろんその効果で今までになかったシャープで安定した走りを実現することもできる。
次期LSはHV+インナーホイールモーターとFC+インナーホイールモーターの両方が設定される。もちろんPHVも用意されるだろう。HVが先に発売され、本命FCVはそのあとでラインアップされることになりそうだ。なお、HVのエンジンは現行型のV8からV6にダウンサイズされるとの情報で、3.5Lクラスが予想される。
自動運転技術も満載
予想としては、次期LSは2017年にNVとPHVが登場し、その1~2年後にFCVが設定される。スタイリングはフロントマスクも含め、LF-FCをほぼそのまま踏襲したものになり、その時期に最も進んだ自動運転技術も搭載。車車間・路車間通信をフルに活用した世界で一番安全な車をめざしてくる。FCVは、発売当初は限定モデル的な位置づけになるかもしれないが、新しいLSを象徴するモデルになることは間違いない。
LF-FCスペック
全長☓全幅☓全高(mm) | 5300☓2000☓1410 |
パワーユニット | 燃料電池 |
駆動方式 | 前輪インホイール モーター付き4WD |
乗車定員(名) | 4 |
タイヤサイズ | 255/40R21 |