多かれ少なかれ、高級ブランドというのは「幻想」を売る商売といえる。もちろん、商品そのもののクオリティが高いというのは当然だが、歴史、デザイン、ストーリー、そして希少性など、そのブランド価値を正当化する幻想が必須。そうでなければ、目の肥えたお金持ちのハートを掴むことは出来ない。ところが、初代セルシオですごかったのは、そういう「幻想」を一顧だにしなかったことだ。考えてみれば当然だったのかもしれないが。
初代セルシオ、今思えば高級車の歴史のターニングポイントなんですね。見つけてみたい気もしますが、個人的に探すのはかなり面倒ですよね。でも無料登録でプロが探してくれたらどうですか?ズバット車販売なら新古車から高級中古車まで希望のクルマを探してくれますよ!
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鎖国市場の高級車市場に開国を迫った日本初の黒船的モデル
セルシオ以前の高級車市場はベンツやジャガーなど伝統的なブランドを中心としたある種閉鎖市場。安定しているが封建社会のように変化に乏しい世界だった。今から考えると多分に貴族趣味的な階級社会だったと言っても良い。
一方、トヨタには高級車の歴史も伝統もない。初代セルシオ以前にトヨタが北米で売っていた最高級車はマークⅡ(北米名クレシーダ)で、コストパフォーマンスなどは高く評価されたが、そこに「高級」イメージを抱くゆーざーなど誰もいなかった時代。
ではどうすればいいか?トヨタの答えは「高品質を持って高級たらしめる」というクルマ作り。まさに、「幻想」とは対極にある地道な品質改善の取り組みにチャンスを見出すしかなかった。
二律背反のYETと源流主義を昇華
セルシオの開発コンセプトで有名なのはすべてを原点から見つめなおす「源流主義」と二律背反する要求(高性能と低燃費、優れた操縦性と乗り心地など)を妥協なく達成する「YETの思想」というもの。特にユニークなところは何もない。
しかし、トヨタはこの地道な改善をかつてないスケールで実施した。例えば、エンジンや駆動系の部品精度の向上を目指すにあたっても「10%や20%じゃお客さんには分からない。一桁くらい上げろ!」というレベル。走りに関しても北海道の士別に周囲10kmという国内最大級のテストコースを作ったのは直接的にはセルシオ開発のためだ。
こういう画期的な高精度でクルマを作ろうとすると、生産部門の協力なしにはそれは絵に描いた餅だが、この高いハードルが生産技術部門のスタッフに火をつける。こういう全社一丸となった高品質なクルマ作りが結実したのが初代セルシオ(レクサスLS)の成功だ。まったくのゼロからスタートしたレクサスLSの北米販売台数は、いきなり年間2万台を突破。それは当時のメルセデスSクラスの1.5倍以上だった。
初代セルシオの大成功によって、高級車市場の風景は一変する。それまでは、閉鎖的な市場で限られたお得意様相手の商売をやっていればよかったのが、セルシオ行こうマーケットは大きく拡大するとともにグローバル化。ブランド力はもちろんだが、性能、信頼性、コストパフォーマンスなど、普通のクルマ同様の厳しい競争が始まる。
今思うと初代セルシオは鎖国状態だった高級車市場に「開国」を迫った黒船のような存在。高級車の歴史を語る上で大きなターニングポイントになったクルマだと思う。
トヨタ初代セルシオ
全長☓全幅☓全高(mm) | 4995☓1820☓1400 |
ホイールベース(mm) | 2815 |
エンジン | V8DOHC |
排気量(cc) | 3968 |
最高出力(ps/rpm) | 260/5400 |
最大トルク(kgm/rpm) | 36.0/4600 |
新車時価格 | 550万円(C仕様) |