三菱自動車が投入する14車種
●SUV:アウトランダー、新小型SUV、RVR
●電動車両:アウトランダーPHEV、新小型SUVPHEV、RVR-EV、軽EV(検討中)
●MPV:デリカD:5、小型MPV
●CAR:ミラージュ、アトラージュ
●軽:eKワゴン、eKスペース
●商用車:コルトL300
SUVと電動車に開発リソースを集中
去る2月3日、三菱自動車は2015年度第3四半期の決算発表会をおこない、2015年4月1日から12月31日の売上高は前年同期比5%増の1兆6620億円、営業利益は同じく1%増の1020億円になったことなどを報告した。
その席上で相川社長自ら、2017年度から2020年度までに14台の新型車を投入することを明らかにした事だ。その具体的の中身については上記のとおりだが、そこでいくつか重要な話が明らかになった。大きな柱はかねて宣言していた通り、SUVと電動車に開発を集中させることだが一歩踏み込んで、中、小型SUVと電動車の開発に集中とした。その柱となる項目を8本に分けてみた。
1.ランサーは自社開発をやめ、ランサーエボリューションももちろん開発せず
2.パジェロは当分フルモデルチェンジを凍結し、パジェロスポーツの次期モデルと開発タイミングを合わせて検討
3.デリカD:5は開発中で2017年度に新型投入
4.アウトランダー&アウトランダーPHEVは2018年度に新型投入
5.アウトランダーとRVRの中間に新型SUVを17年度に投入
6.インドネシアの工場でコンパクトなMPV型SUVを17年度に生産、発売。日本にも導入を検討。
7.RVRは当初の予定をスライドし、2019年度に投入
8.i-MiEVに変わるワゴンタイプのEVを投入
となる。2020年度までの商品計画を洗いざらい発表した形だ。
アウトランダーとRVRに次ぐSUV
今回の会見で最も注目されたのが、新型SUVを2017年度に投入すると発表した事だ。このSUVはアウトランダーとRVRの中間サイズといい、欧州での販売も考えるとCセグメントとなるはず。排気量は1.8~2.0Lとなり、ディーゼルも当然あるはず。ドイツ車ではゴルフ、国産車ではアクセラといったモデルがこのセグメントに入る。さらに相川社長は基準車の他に、前後ツインモーター4WDのPHEVをその後1年以内に発売したいとした。
アウトランダーPHEVは、動力性能、経済性、走行安定性ともに世界トップクラスのPHEVだが、やや大きいという声があるのも事実。サイズが小さくなるということはパワートレーン自体がコンパクトにできるということになり、エンジンは経済性を考えアウトランダーPHEVの2Lに比べダウンサイズされた新開発の3気筒1.1L MIVECか。これは13年の東京モーターショーに出展されたXR-PHEVで提案されたものだ。
新型PHEVはエンジンをほぼ発電機として使うとすれば3気筒1.1L MIVECでも不足はないはず。ただし、SUVらしい力強い走りを手に入れるならMIVECターボという選択肢もあり得るだろう。ツインモーター4WDシステム自体はアウトランダーPHEVで完成しているので、モーター出力(アウトランダーPHEVは前後60kW)と駆動用バッテリー(アウトランダーPHEVは12kWh)は小さなものになるはずだ。
SUVにこだわる理由とは
三菱自動車がSUVにシフトする大きな理由は市場動向がある。グローバルで見た場合、20年のSUV市場は14年比で約20%の伸びが予想され、特にRVRや新型SUVが属する小型SUV市場は60%もの伸びが期待できるという。
昨年アメリカ・イリノイ工場を閉鎖した事で、三菱自動車がマーケットとして期待するのはアジアとロシアを含む欧州ということになる。アジアマーケットでのSUV人気は大いに期待できるが、欧州マーケットは電動化が不可欠だ。というのも昨年COP21と呼ばれるパリ協定が締結された。これは2020年から実施され、世界の平均気温の上昇を2度未満に抑えることで世界各国が合意したものだ。
これにより先進国はもちろん、新興国でもCO2の排出による優遇税制など各国が施策を採る可能性が高い。またCAFEと呼ばれるメーカー別の平均燃費基準がより厳しくなることも考えられる。PHEVやEVを数多くラインアップすることで、三菱は各国で売りやすい環境に恵まれる可能性が高くなるというわけだ。EV及びPHEVの20年の需要予測は14年比の約5倍と三菱側では見込んでいる。
パジェロミニは開発せず。そしてパジェロはパジェロスポーツと統合?
三菱ファンにとってのビッグニュースは何と言ってもデリカD:5の新型がしっかりと開発されていることがわかったことだろう。エンジンについてはタイで生産され、大人気となっているパジェロスポーツと同じ4N15ディーゼルエンジンの搭載がが有力だ。直4、2.4Lディーゼルターボは最高出力181ps、最大トルク43.8kgmと強力。4WDシステムもランエボ譲りのAYC(左右駆動力配分システム)が入った最新タイプのS-AWCが与えられるはず。2017年度と発売までまだ1年以上あるが、待つ甲斐のあるモデルと言えそうだ。
もう1台はインドネシア工場で生産予定のMPVタイプSUVだ。これは13年の東京モーターショーでコンセプトARとして出品されたものがモチーフとしていかされるはずでコンパクトな6人&7人乗りとなる。東京モーターショーではマイルドハイブリッドだったが、インドネシアなどASEAN諸国が主なマーケットという事で直列3気筒1.1Lターボエンジンの搭載が有力。三菱初のダウンサイジングターボとして性能面でも120ps以上の最高出力と24km/L以上の低燃費の両立が期待され、シエンタが大人気の日本導入の可能性も高い。
残念なニュースはパジェロミニの復活が2020年度までにはないことが分かったこと。営業部門を中心に三菱社内でも何度も議論されたが、軽自動車がNMKVで企画されることになり、開発の主体が日産自動車になったことで、見送られたのかもしれない。その代わり、新型eKワゴンをベースとした軽自動車のEVが検討されていることがわかった。i-MiEVに代わるEVと言え、ワゴンタイプとなることで実用性はグンと上がる。アウトランダーとアウトランダーPHEVの次期型は18年度、RVRとRVRのEVは19年度の投入とたたみかける計画で、ここまでラインナップがそろえばランドローバー社のように強力だ。
最後にミラージュとその4ドア版アトラージュは、タイ生産のまま新型が日本導入予定だが、先に述べた1.1Lダウンサイジングターボの搭載が期待でき、そうなればスポーツバージョンが生まれる可能性もある。三菱ファンなら往年のサイボーグの復活を夢みたいところだ。