VWポロなど、ダウンサイジングした3気筒ターボエンジンを搭載した欧州車が一昨年あたりから続々と日本に上陸。そして国産車でもこの3月、スズキがバレーノに1Lの3気筒ターボを設定。今年はほかの国産メーカーからも誕生する動きがある。今注目の3気筒ターボ。国産3気筒ターボの期待値は?4気筒と比べると?など3気筒ターボの実力に迫る!
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今年、国産3気筒ターボが続々と登場。その実力は?
主にCO2排出量規制をクリアするためだが、欧州勢がスモールカーをどんどん3気筒ターボ化している。日本でまず話題になったのはフォードフェイスタが1Lなのによく走る!ということだったが、その後もBMWとミニが1.5Lまでを3気筒ターボ化。VW・アウディはup!やA1、プジョー・シトロエンは1.2Lクラス、ルノーとスマート(海外)も0.9L3気筒ターボを使う。要するに、はっと気がついたら欧州1~1.5Lクラスは3気筒ターボがスタンダードになっていた。
一方、国産勢を見ると、これが意外に心許ない。軽自動車があるためか、3気筒ターボはそこに集中。1Lクラスには廉価版NA3気筒はあっても、現代的なダウンサイズターボがない!そん状況のなか、伏兵は意外なところからあらわれた。スズキが3月に発売したバレーノはインド生産車を日本市場に持ってくる点でも画期的だが、新開発の1L3気筒ターボ「ブースタージェット」K10C型を用意(5月13日発売)。従来からの「デュアルジェット」K12C型とあわせた2本立てとしてきている。
まず、カタログ数値がなかなか。111ps/16.3kgmというスペックは、好評のフェイスタと比べてもいい勝負。トルクでは1.0kgm負けるが馬力では10ps上回る。950kgという軽量ボディを考慮すると、200kg以上重いフェイスタをぶっちぎる可能性が大だ。
この新エンジン、技術的に注目されるのは「ウェイストゲートノーマルオープン制御」という過給圧コントロール方式。通常は過給圧が上がり過ぎた時に「ウェイストゲートを開いて」排ガスを逃がすが、これは高過給圧が必要なときだけ「ウェイストゲートを閉じる」というもの。
おそらく、モード燃費走行などの低速/低負荷域ではこちらの方が有利という判断と思われるが、過給レスポンスなどを含め、その真価を確かめて見たい。
スズキ以外では、ホンダが開発している1L3気筒ターボの登場が待たれる。これは130ps/200Nmと、フェイスタの欧州向けハイパワー仕様すら凌ぐ数値。テストコースで乗った印象では「これなら世界と戦える!」という良好な手ごたえがあった。
また、ダウンサイジングターボには不熱心と思われていたトヨタも最近風向きが変わったようで、パッソベースのスモールミニバンに1L3気筒ターボという情報もあり。本当に出たら面白いと思います。
3気筒ターボのメリットデメリットとは何か?
ダウンサイズターボといっても、排気量だけ減らしてもさしたる面白みはない。V8をV6へ、V6を直4へといった具合に気筒数の削減をともなってはじめて、車重量やパッケージングを含めた車のトータルな効率アップが実現できる。
ただし、気筒数削減にはデメリットが伴う。8気筒が6気筒になったくらいでは回転バランスや静粛性に悪影響は少ないが、6気筒が4気筒になるとバランサーシャフトなどで補正しないと回転フィールの「品質」を維持するのが難しい。ましてや、4気筒というのは内燃機関の「基本スペック」みたいな数字。ここからシリンダを一つ減らすのは、技術者にとってかなり覚悟のいることなのだ。
とりわけ注意しなければいけないのは、3気筒エンジン特有の偶力振動と、爆発間隔が開くことによるショボい排気サウンド。何も対策しないと、4気筒に比べてエンジンフィールが大きくグレードダウンした印象を与えてしまう。
それを象徴するのがVW up!とアウディA1の関係。up!もA1も基本構成は74.5mm☓76.4mmの3気筒999ccエンジンだが、前者はポート噴射NA、後者は直噴ターボでしかもバランサーシャフト付き。乗ると、パワーはもちろん、回転フィールや静粛性など、「同じ1L3気筒でここまで違うか!」というほどの大きな差がある。
つまり、純粋効率面だけを見れば3気筒ターボには大いに魅力があるものの、「商品性」という事を考えると弱点をカバーする対策が必須。そこを真面目にやると結果としてメーカーにとってコスト面でのメリットが少ない。このあたりの事情が、トヨタが3気筒ターボに消極的な理由ではないかと思われる。
にもかかわらず、欧州勢がやたら3気筒ターボに熱心なのは、EUのCO2排出量規制とエンジンのモジュール化が背景にある。EUで2021年の目標値となっている95g/kmというCO2排出量規制は、多少のデメリットに目をつぶっても絶対クリアしなければいけないハードル。「3気筒は振動がデカいから」なんて甘いことは言ってられないのだ。
また、ボア・ストロークや補機類を共用化して、3気筒/4気筒をモジュール化する設計コンセプトも「小さい方は3気筒で」という流れをアシストする。ノイズやバイブレーションへの対策をエンジンマウントのレイアウトなどを含めて最初から対策しておくことで、3気筒化によるデメリットを抑え込むことが可能。BMWやプジョー・シトロエンなど、最新の3気筒ターボの仕上がりはどんどん良くなってきている。
日本における3気筒ターボ車の主な登場状況
- 2014年2月:フォードフィエスタ発売(1L直3ターボ搭載)
- 2014年6月:三代目BMWミニクーパー発売(1.5L直3ターボ搭載)
- 2014年11月:プジョー308発売(1.2L直3ターボ搭載)
- 2015年1月:ルノールーテシア ゼン発売(0.9L直3ターボ搭載)
- 2015年5月:アウディA1 1.0TFSI発売(1L直3ターボ搭載)
- 2015年8月:BMW318iマイチェン(1.5L直3ターボ搭載)
- 2015年9月:VWポロ ブルーモーション発売(1L直3ターボ搭載)
- 2015年10月:ホンダが1L直3ターボエンジン技術を公表
- 2015年11月:シトロエンDS3シック発売(1.2L直3ターボ搭載)
- 2016年5月:スズキバレーノXT発売(1L直3ターボ搭載)
3気筒ターボと4気筒ターボの価格差は?
- VWポロ TSIコンフォートライン:1.2L直4ターボ、22.2km/L、228万4千円
- VWポロ ブルーモーション:1L直3ターボ、23.4km/L、269万9千円
- BMW118i(マイチェン前):1.6L直4ターボ、16.6km/L、298万円
- BMW118i(現行型):1.5L3直ターボ、18.1km/L、298万円
3気筒エンジン車と4気筒エンジン車の価格に違いはあるのか?同車種で同排気量の3気筒車と4気筒車というのは無いが、わりと近い条件なのがVWポロ。その価格はTSIコンフォートライン(4気筒)が228万4千円、同ポロのブルーモーション(3気筒)は269万9千円とブルーモーションの方が高い。が、これはブルーモーションの方が装備が充実しているという要因もある。BMW118iの新・旧車で比べると、1.5L3気筒の現行モデル、1.6L4気筒の改良前モデルともに298万円と、同じ価格になっている。