アコードがマイナーチェンジを受けた。内容的にはつい先日登場したオデッセイハイブリッドで盛り込まれた新技術をアコードにも応用したものと言っていい。駆動用モーターは巻線の構造を見直すなどして体積を2割以上小型化したうえ、出力で約15ps、トルクで0.8kgmパワーアップ(184ps/32.1kgm)。パワーコントローラーは23%、リチウムイオン電池は11%小型化した。
今のところ国内市場におけるアコードの月販は200~300台というレベルだが、ホンダはこの2モーターハイブリッド(i-MMD)の改良に真剣。オデッセイだけではなく、今後ミドルクラスで搭載モデルを拡販していく方針だ。注目すべきは、性能向上もさることながらようやくi-MMDもコストダウンが成果を見せはじめていることだ。
モーターの巻線構造変更は生産性を大きく向上させるものだし、パワーコントローラーは内製からケーヒンからの調達に変更、リチウムイオン電池も系列のブルーエナジーからパナソニックにサプライヤーが代わっている。
世界のハイブリッド車市場は事実上トヨタの一強という時代が長いわけだが、そこで、唯一、燃費性能というハイブリッド車の本丸にこだわって勝負を続けているのかホンダ。トヨタを相手にするには、性能とともにコストを下げていかないと長期戦を戦い抜くことはできない。ことハイブリッドに関しては、ホンダはかなりクールに調達先の選別を行っているように見える。
ただ、その原価低減がユーザーに還元されているかというとなかなかそう言い切れないのが苦しいところ。ホンダのi-MMDは基本的にシリーズハイブリッドだから、バッテリーはプリウスの約2倍、1.4kWhのリチウムイオン電池を搭載する。このへんがそもそもコスト高だし、モーター/インバーターなどもハイブリッド年産100万台のトヨタからすれば量産効果も道半ばだ。
結果として、新型アコードの385万~410万円という価格設定は、従来より20万円のアップ。ホンダセンシングをはじめとする先進装備の充実によって、コストパフォーマンス的にはSAIあたりとはいい勝負という印象だが、フィットハイブリッドほどのお買い得感はない。
また、この新型コードで惜しまれるのはプラグインハイブリッドモデルが廃止されたこと。ここ最近欧州PHVで大攻勢を仕掛けてきているだけに、国産の対抗馬がアウトランダーPHEVしか存在しないというのは寂しい。
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ベンツ&BMWのPHVと比べてアコードの実力は?
そんなことを感じたのは、今回の比較はメルセデスベンツC350e(721万円)とBMW 330e(554万円~)というPHVサルーンを持って行ったからだ。
両車ともバッテリーが十分に充電されている時にはほぼEVとして走るわけだが、その時のドライブフィールが実に上質で快適なのだ。高速の100km/h巡航レベルでも静粛なEVクルージングを余裕でカバーし、市街地における渋滞追従などでも、アクセルコントロールはエンジン駆動よりイージー。
ACC(アダプティブクルーズコントロール)による自動追従走行でも、EVモードの方がよりスムーズでエレガント。エンジンのみのCクラスや3シリーズより、確実に1ランク上のプレミアム感を漂わせている。
欧州車がPHVに熱心なのはよく知られているとおりCO2排出規制でPHVが極めて優遇されているから。EV航続距離25kmで計算上のCO2排出量は50%。50kmなら66%もディスカウントする超優遇策となる。
だから高コストもものともせず欧州車は熱心にPHVを投入してきているわけだが、そういう前提があったとしてもBMW 330eの554万円からという価格設定は驚異的。販売を終了した旧アコードPHVは500万円。プラグインではないレクサスIS300hとほぼ同レンジ。
競合範囲をクラウンハイブリッドあたりまで広げても十分以上にコンペティティブだ。ただし今回アコードと欧州PHVをじっくり乗り比べてわかったのは、バッテリーを使い切って普通のハイブリッド車として走らせているときは、アコードの方が完成度が高いということだった。
欧州PHVをハイブリッドモードで走らせた場合、ガンガン飛ばしているような状況では印象が悪くない。両車とも1モーター2クラッチと多段AT(C350eは7速330eは8速)を組み合わせたメカニズムだから加速のダイレクト感やメリハリのあるシフトフィールも好ましい。
一方アコードの走りは基本的にシリーズハイブリッドなので、どちらかというとEVライク。エンジンは高速域以外では発電に専念する仕様なのでフル加速しない限りあまりその存在を感じさせない。正直言ってあまり飛ばそうという気にはならないタイプのパワートレインだ。
首都高の渋滞なんかに巻き込まれるとスムーズで洗練されているのはアコード。欧州PHVは頻繁に発生するエンジンのオン/オフで、断続クラッチが不快な音とショックを伝えてくるし、回生ブレーキの微妙なコントロール性も今ひとつ。この点は特にC350eのギクシャクが気になり、価格面を考慮しなくても330eに軍配が上がる。
市街地を中心とした日常生活ペースの走りでは、実燃費を含めてアコードハイブリッドは欧州プレミアムのPHVと互角以上の勝負ができる実力を備えている。欲を言えば400万円台前半でプラグイン化してくれたらベストだ。
アコードマイナーチェンジのポイント
- フロントマスクの一新
- リチウムイオンバッテリーを含むIPUを小型(-33%)&軽量化(-12.8%)したことで、トランク容量を398Lから424Lへ拡大
- モーターを丸型銅線から角型銅線へと変更したことで高出力(169ps→184ps)、高トルク化(31.3kgm→32.1kgm)
- JC08モード燃費が30.0km/L→31.6km/Lへ向上(LXのみ、EXは30.0km/L)
- ボディにハイテン鋼採用部位を増やし高剛性化、軽量化
- 吸音材等の追加による静粛性向上
- ホンダセンシングの搭載
アコードマイナーチェンジのポイントは、「徹底した熟成」に尽きる。内外装デザインもそうだが、乗り心地操や操縦安定性、音や振動など、初期型と比べて大幅に改良されている。また、ハイブリッドシステムも大幅に進化しているのも大きなポイント。
アコードハイブリッドvs欧州PHVスペック比較
アコードハイブリッドEX | ベンツC350e アバンギャルド |
BMW330e Sport | |
全長☓全幅☓全高(mm) | 4945☓1850☓1465 | 4690☓1810☓1430 | 4645☓1800☓1440 |
ホイールベース(mm) | 2775 | 2840 | 2810 |
車両重量(kg) | 1600 | 1830 | 1770 |
エンジン | 直4DOHC | 直4DOHCターボ | 直4DOHCターボ |
排気量(cc) | 1993 | 1991 | 1998 |
最高出力(ps/rpm) | 145/6200 | 211/5500 | 184/5000 |
最大トルク(kgm/rpm) | 17.8/4000 | 35.7/1200-4000 | 27.5/1350-4600 |
モーター出力 | 184ps/5000-6000rpm | 定格出力68ps、 最高出力61.5ps |
定格出力61ps、 最高出力8ps/2500rpm |
モータートルク | 32.1kgm/ 0-2000rpm |
34.7kgm | 25.5kgm/2500rpm |
バッテリー | リチウムイオン、1.4 | リチウムイオン、6.28 | リチウムイオン、7.7 |
EV航続距離(km) | - | 25.4 | 36.8 |
JC08モード燃費(km/L) | 30.0 | 17.2 (ハイブリッドモード) |
17.7 (ハイブリッドモード) |
電力量消費率(km/kWh) | - | 4.36 | 5.13 |
サスペンション形式 | ストラット/ダブルウィッシュボーン | 4リンク式/ マルチリンク |
ストラット/ 5リンク式 |
タイヤサイズ | 235/45R18 | F:225/45R18、 R:245/40R18 |
225/50R17 |
価格 | 410万円 | 721万円 | 577万円 |
実燃費(km/L) (往路/復路) |
18.4/18.4 | 25.6/16.6 | 23.2/18.5 |