年々派手に、高価になるいっぽうの軽自動車だが、ミライースは昔ながらのベーシック軽の本質を追求。
2011年に登場した初代はイーステクノロジーを搭載し、ガソリンエンジン車として初めてJC08モードで30.0km/Lをマークするなど、燃費性能に特化した車だった。
スズキアルトとの燃費争いはすさまじく、発売後も0.2km/L刻みの攻防を展開。最終的にミライースは35.2km/Lまでカタログ燃費を伸ばし、35.0km/Lの旧型アルトをうっちゃった。
しかし負けたまま黙っていないのがスズキだ。2014年12月にフルモデルチェンジしたアルトは60kgの軽量化を果たし、何とJC08モード燃費37.0km/Lを表示してミライースを一蹴。
しかも燃費計測の不正が発覚して国土交通省が再試験したところ、届出地よりもさらにいい「38.3km/Lでした」というオチまでついた。
それで新型ミライースもフルモデルチェンジで再びアルトを抜くと信じて疑わでいなかったのだが、新型ミライースのJC08モードは最もいいグレードでも35.2km/Lと先代と同じ数値にとどまった。
その理由は、「カタログ燃費の数値はお客さんの心に響かないというのがわかっていたから」だと、チーフエンジニアの南出氏はいう。
2015年の段階で「次のミライースはカタログ燃費にはこだわらない」と決めていたという。それよりも実用燃費の向上と、もっと気持ちの良い走りを目指したとのこと。
では、新型ミライースはどのようにしてそこを追求したのか。最も重要なのは徹底した軽量化だ。従来型の730kgから650kgに、実に80kgも軽くなっているのだ。
ダイハツ独自の軽量高剛性ボディ構造「Dモノコック」を採用し、樹脂パーツも従来型以上に広範囲に使用。
具体的にはフロントフェンダー、バックドア、燃料タンク(2WD車のみ)などを樹脂パーツとしている。
さらに足回りの部品も徹底的に無駄を削ぎ落として軽量化。L、Bグレードには国内最軽量の13インチタイヤ&スチールホイールを採用している。
80kg軽量化の内訳はボディーで35kg、足回りで15kg、樹脂パーツの拡大採用で30kgというものだ。
あまり軽くしすぎるとかえって走りの質感が低下するのではと心配になるが、「そのぎりぎりのところまでやりました。実際、乗り心地が悪化する傾向にありましたのでショックアブソーバーを改良しています」と南出氏。
従来型よりもシリンダー径を拡大するとともに、アブソーバーのピストン速度に応じてサスペンションの上下の揺れをコントロールする軽自動車初の超飽和型バルブを採用。
軽い車は突き上げが大きくなりがちだが、そこをうまくコントロールできる足になっているという。このショックアブソーバーはKYB製だ。
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スマートアシストⅢ採用で安全性大幅アップ
今は安心と安全が重要視される時代。新型ミライースももちろんそこは抜かりなく、最新の予防安全装備「スマートアシストⅢ」を新採用している。
スマートアシストⅢはすでにタントに採用されているものだが、新たに世界最小サイズのステレオカメラを開発できたことで、車高が低く、フロントガラスが小さいミライースにも搭載できるようになったとか。
なお、スマートアシストⅢの価格は6万円。言うまでもなくその価値は十分にある。
先代ミライースにも従来型のスマートアシストが装備されていたが、スマートアシストⅢになってからの新機能は、緊急自動ブレーキが歩行者にも対応できるようになったこと、車線逸脱警報機能の追加と前方だけでなく後方にも誤発進抑制制御機能が付いたこと、そして、オートハイビームの追加など。また、作動速度域も拡大している。
さらに、スマートアシストⅢ搭載車には軽自動車として初めてフロント2個、リア2個のコーナーセンサーも採用。
安心・安全への取り組みはベーシックモデルであればこそ大切という開発陣の思いが伝わってくる。
新型イースのプラットフォームは先代モデルからの流用となるが、「リアボディ以外は一新しています」というもの。
その結果実現できた80kgもの軽量化を、JC08モード燃費数値の向上に当てるのではなく、実用燃費の向上と気持ちいい走りに振ったというのが最大のポイントだ。
エンジンはKF型3気筒658ccのみでトランスミッションは全車CVT。エンジンスペックは49ps/5.8kgmと平凡だが、「是非走りの進化を体感していただきたい」と南出氏。
価格は80万2400円からのスタートで、売れ筋のX”SAⅢ”は108万円(2WD)となっている。
ミライースの方針転換でアルトは?
カタログ燃費は追わず、実用燃費とNV性能に優れた気持ちのいい走りを追求した新型ミライース。ライバル・アルトのJC08モード燃費37.0km/Lにはかなわないものの、アルトにはない魅力を訴求してきた形だ。
その進化の度合いは実際に走らせてみなければわからないが、スズキとしても新型ミライースの出来栄えは気になるところだろう。
カタログ燃費を極限までおえば、ドライバビリティに影響が出るのは確か。新型ミライースはそれを嫌って方針転換したわけだが、アルトは今後も改良でカタログ燃費の向上に注力するのか?その出方が気になるところだ。
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新型ミライース価格表
グレード | トランス ミッション |
駆動方式 | JC08モード 燃費(km/L) |
価格(円) |
B
|
CVT
|
FF | 35.2 | 842,400 |
4WD | 32.2 | 972,000 | ||
B”SAⅢ”
|
FF | 35.2 | 907,200 | |
4WD | 32.2 | 1,036,800 | ||
L
|
FF | 35.2 | 874,800 | |
4WD | 32.2 | 1,004,400 | ||
L”SAⅢ”
|
FF | 35.2 | 939,600 | |
4WD | 32.2 | 1,069,200 | ||
X”SAⅢ”
|
FF | 34.2 | 1,080,000 | |
4WD | 32.2 | 1,209,600 | ||
G”SAⅢ”
|
FF | 34.2 | 1,209,600 | |
4WD | 32.2 | 1,339,200 |
ミライースX”SAⅢ”(FF車)主要諸元
全長☓全幅☓全高(mm) | 3395☓1475☓1500 |
ホイールベース(mm) | 2455 |
車両重量(kg) | 670 |
エンジン | KF型658cc直3DOHC |
最高出力(ps/rpm) | 49/6800 |
最大トルク(kgm/rpm) | 5.8/5200 |
JC08モード燃費(km/L) | 34.2 |
使用燃料/タンク容量(L) | レギュラー/28L |
トランスミッション | CVT |
サスペンション(F/R) | ストラット/トーションビーム |
タイヤサイズ | 155/65R14 |
価格 | 108万円 |