ホンダは世界のモータージャーナリストを対象に、ホンダミーティングの名称で、開発中の先進技術を公開する場を設けている。2015年はとくに充実した内容だった。最も印象に残ったのは、16年3月からリース販売が始まる新型燃料電池自動車、クラリティ・フューエルセル(FC)である。クラリティFCは、燃料電池スタックを前作のFCXクラリティ(08年)比で33%小型化。
パワートレーンをエンジンフード内に集約し、広い室内空間を作った。明るい色調で統一されている効果もあり、キャビンは開放的なイメージである。スタイリングは伸びやかなファストバック。リアホイール上部をカバーするなど各部に空気抵抗を低減する処理が施されている。
クラリティFCの走りは、低重心設計を実感するケースが多いトヨタ・ミライに比べて、通常の前輪駆動ガソリン車に近い。130kWの高出力モーターのメリットで加速は力強く、航続距離は700kmに達する。短時間の試乗だったが、スムーズな走行フィールに好感が持てた。静粛性はミライよりもいい。
新しいプラグインハイブリッド車(PHEV)にも触れた。EV走行能力を従来のアコードPHEV(37.6km)の3倍以上に拡大したという。走りはほぼEVというフィーリングだった。バッテリーを床下に搭載した効果で、アコードの「荷室の奥行きが狭い」点が改善され、通常のハイブリッド車と同じ容量まで拡大していた。
完成度が高い技術は小型車両用の1L直列3気筒ターボエンジンと、大型車両の10速ATである。エンジンは欧州用シビックに搭載されていた。サウンドは3気筒特有のフィーリングだが、トルクの盛り上がりはなだらかで、自然吸気1.8Lに匹敵するというパワーを実感した。ATはアキュラRLX(日本名レジェンド)試乗。状況に合わせたスピーディかつ的確なシフトアップ・シフトダウンが走りの上質感を高めていた。
自動運転試験車はスピード性能に圧倒された。コーナーを織り交ぜたコースで同乗走行した自動運転車は、高いセンサー能力を実証する狙いから、タイヤが鳴くほどの高速で自動運転を行った。将来は自動運転車のレースが開催されるかもしれない、そんな印象を抱いた。