2008年、アイサイトを市場導入してからスバルが変わった。水平対向エンジン+4WDという、独自の技術で「車好き、機械好き」をひきつけてきたスバルが安全をキーワードにしたアイサイトにより、誰にでも注目されるメーカーへと変貌していったのだ。
もちろん、アイサイトだけではなく、2007年に策定された新中期経営計画「すべてはお客様のために」に見られるように「トヨタ提携効果の拡大」「スバルらしさの追求」という課題を着実に推し進めたことにもよる。
12年には軽自動車の生産から撤退するなど、大きな改革を伴ったが、スバルは今、コアなファンの周辺に一般的な車好きを取り込んだヨーロッパメーカー型の日本車として期待されている。
ホンダやマツダもそうだが、その中で特に安全面でリードしているのがスバルといってもいいだろう。
10月発売のニューインプレッサでは、日本車初の歩行者保護エアバッグを採用するなど、さらなる注目すべきポイントも増えそうだ。
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将来的にはツインクラッチも検討課題に
最初の情報はスバルのコアなファンが最も知りたい次期WRXについてだ。ベースとなるインプレッサは10月にフルモデルチェンジを受けるが、WRXはまだ先。並行して現行WRXが販売される予定だ。
8月27~28日、鈴鹿サーキットでスーパーGTインターナショナルのパドックには、「WRX S4 tSコンセプト」が展示され、まだまだ現行WRXの存在をアピールしていた。
このtSも秋には市販されることになるはずだが、インプレッサの次世代への進化に合わせ、次期WRXの開発は着々と進められている。
登場は来年秋頃が濃厚だが、ポイントはEJ20に代わる新しいFA20ターボが採用されるかどうかだった。FA20ターボと6速MTの組み合わせは、メーカー側の説明では、エンジン特性とギアリングのマッチングなどの点で難しいとされていた。
EJ20ターボは2Lで最高出力308ps/6400rpm、43.0kgm/4400rpm。それに対し、FA20ターボは300ps/5600rpm、40.8kgm/2000~4800rpm。パワー&トルクの差は8ps、2.2kgmの差だ。
もし仮に次期WRX STIがS4以上のやはり308psを確保するとなると、EJ20を採用するか、FA20を進化させるかだが、ほぼFA20になることが決定しているという。
FA20で308ps出すことはそれほど問題はないが、耐久性、信頼性という点でエンジン本体の補強が必要と言われ。
しかし、新型インプレッサでFA20は80%近くが新作となり、それを踏まえての進化と言われている。
そのため、次期WRXのFA20ターボは、最高出力で310ps当たり、トルクもEJなみの43.0kgmを狙うことになる。
さらにJC08モードも現行のEJ20が9.4km/Lに対し、S4のFA20なみの13.0~13.5km/Lあたりと40%近く改善されることになる。
問題の6速MTとの組み合わせもミッション内の大幅な変更により、これも可能になるはず。ただ、世界の潮流はツインクラッチによるペダル化。いずれWRX STIもその方向に動くが、当面は6速MTということだ。
そのため次期WRX STIもアイサイトはつかないことになる。その点で緊急停止にエンジンを停止させることのないツインクラッチミッションの採用が待たれるわけだ。
次期WRX STIの全体像としては、ニューインプレッサベースの新しいプラットフォーム、SGPを採用する高剛性ボディに、310psのFA20ターボ、そして6MTの2L最強のスポーツセダンになる。デビューは17年秋。価格は400万円程度。
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ハイブリッド、PHVなど新技術目白押し
そしてやはりインプレッサベースのXVだ。セダンがG4、5ドアがこれまで同様スポーツと呼ばれることが判明しているが、このスポーツがデザイン上のベースとなることは明らかだ。
車高が高められ、ホイールアーチにはオーバーフェンダーがつくのは当然として、ボディ前後にはSUVらしいアンダーガードが装着され、コンパクトSUVとして魅力的な商品に仕上げられるのは間違いない。
このXVで注目なのはハイブリッドだ。吉永社長が明言しているように、来年にはストロングハイブリッドをインプレッサに追加。
このシステムがどうなるかが謎だったが、今回、新たにそのシステムの一部がわかった。当然ながら、トヨタの方式になるわけだが、現行XVやインプレッサとはそのシステムの異なる。
トヨタ方式となれば、縦置きエンジンのインプレッサに使えるのはクラウン系に使われるFR用の遊星歯車を使った動力分割機構。
しかし、最新情報では、この縦置きを使わず、現行プリウスなどに展開されている横置きの分割機構を使った「新システム」を構築しているというのだ。
スバルらしさを演出するために、4WDは後部にモーターを積むタイプではなく、プロペラシャフトを持ったメカニカルな4WDを開発中という。
横置きの分割機構を来年のインプレッサに続き18年、XVに採用、そしてレガシィなどに対応した縦置きのシステムの4WDとなる。価格的には現行モデルより20万円ほど高くなるという。
フォレスターは来年秋、デザインはTMS出展のVIZIVとほぼ同じ
最後に来年デビュー予定の次期フォレスターだが、このデザインは昨年、東京モーターショーに出展されたVIZIVフューチャーコンセプトをほぼ市販型にしたままで登場する。
ホワイトのボディの所々にオレンジを配し、若々しいイメージを表現していたが、今年夏にはこのオレンジを試験的にアレンジしたXV tSを発売。
スバルの新しいSUVとしてイメージの提案として、次期フォレスターもこうしたデザイン処理が特徴になりそうだ。
次期フォレスターにもハイブリッドが投入される予定で、19年にプラグインハイブリッドが登場し、北米を中心に販売されることになる。
このPHVにより、トヨタ同様、EV走行が60km以上可能になり、燃費的にも大きく進化することになりそうだ。
デザインと燃費はもちろん、フォレスターの魅力は本格的なオフロード性能。このあたりも相当力が入れられ、スイスや北欧で人気のスバルブランドのプレゼンスをさらに高める車種となる。
次期フォレスターは来年の東京モーターショーあたりの登場が有力。来年7月、100周年を迎え、富士重工業からスバルへ社名変更を行うが、車自体も着実に進化を遂げる。