「自動運転」というフレーズがある。手放し運転を想像する人や、部分的な運転支援を考える人など受けるイメージは様々だろう。確かに、いずれ実現する自動運転社会は魅力的だが早くも問題点が見つかった。
自動運転社会に対する問題点は大別して3項目ある。
- 過信
- 人への影響
- 社会への影響
この3つだ。
自動運転とはいえ機械の方にもミスは発生する
aで真っ先に問われるのは運転支援技術である「自動運転」技術への信頼性。このところ、「自動運転」技術を推進する報告書の多くには、「事故原因の80~90%は人の認知・判断・操作に起因する」との記述が目立つ。確かに統計上はそうなるのだろう。しかし、機械側にもミスやエラーは発生する。
一般社会ではこうしたミスやエラーを見越したフェールセーフ機能をあらかじめプログラミングしたり、他のシステムでバックアップしたりすることで大きな問題になりにくいと言われているが、それでも完全無欠はない。技術への過信が正しい普及を妨げるという問題点がここにある。
【広告】
異変が起こった時に危険を避ける能力が下がる
bは非常にシンプルだ。高速道路などで条件が整えば、ほぼ100%の運転操作をシステムに任せること(いわゆる「レベル4」の段階)ができるようになると、人は運転環境に対する緊張感を徐々に失いはじめる。
また、手動で運転する時間が少なくなることでドライバーの平均的な運転スキルが低下することが考えられるし、異変を察知したり、自らの運転で危険を避けたりする能力が下がる。ここが大きな問題点だ。
欧州や北米における商用車の世界では、レベル4での運転中にステアリングから手が放せ、さらにシートをリクライニングさせた車内で伝票整理などのサブタスクが行えることが提案されている。
しかし、GVW(車両重量+乗車定員+最大積載量)25t以上の大型トラックでそれは望ましい姿なのか。
PDAの画面とにらめっこしている最中に、車側から「10秒後に手動運転に切り替えます」とアナウンスされて、瞬時に周囲の安全状況を把握して運転操作を引き継げるのか。
先ごろ、セレナが「プロパイロット」という名の運転支援技術を搭載してきた。しかしセレナのみならず、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)や衝突被害軽減ブレーキでの自律自動ブレーキには制動力をはじめとした物理的な限界があるため、運行状況を監視するというドライバーに課せられた重要なタスクは、例えこうした運転支援技術を搭載している車であってもドライバーに残る。
責任も然りだ。よって、自動運転技術が実用化される前にルールを作り、運転支援技術に対する正しい使い方の徹底を図る必要がある。
自動運転化によって仕事を失う人も発生する
cは多岐にわたる。企業は人件費削減の観点から、将来的には運転の自動化を追い風にタクシーやバスのドライバー、さらには物流業界のドライバーを削減する。
これは超高齢社会のドライバー不足解消にとって朗報ながら、職を失う人が一定数発生するため問題になる。
また、完全なる自動運転社会になれば交通事故の激減が期待できる一方で、手動運転車や二輪車、歩行者との意思疎通が難しく、これまで想定していなかった事故形態が発生する。
加害者/被害者の立場をどのように認定していくのか、これには道路交通法の改正から、自動車保険制度の見直しなどが迫られる。技術だけが先行した社会に発展は望めない。
【広告】
その他に考えられる自動運転の問題点
- 自律自動運転の定義づけの徹底
- 現在の自動運転レベル(1~4または0~4)の世界統一
- 自律自動運転に必要な人工知能、更なる高度化への方法論
- ディープラーニングにおける入力時のミス
- 自律自動運転専用の運転免許は必要かどうか
- 自律自動運転時の飲酒運転
- 自律自動運転システム開発における協調領域と競争領域の策定
- 事故で修理やパーツ交換を行った自律自動運転システムの再チェック方法
- システムが不具合を起こした際の診断システム
- 自律自動運転システムのログ記録
- 人間が意識不明などになった際の事故防止方法
- 既存の車(手動運転車)をいかにして自動運転車となじませるか
- 路車間通信センターの敷設費用とそのメンテナンス費用の確保
など、まだまだ考えるべき問題は多数あるということだ。