日本車の低燃費技術において今や当たり前となった横綱的存在がハイブリッドである。日本車のハイブリッドは大きく4つに分かれる。構造がシンプルな順に上げていくと、
①大型化したオルタネーターでわずかな加速の際のアシストと減速エネルギーの回生を行い、燃費の向上は少ないものの、コストが安い割にエコカー減税の増額まで含めるとユーザーのメリットが大きいオルタネーター式(セレナのスマートシンプルハイブリッド、スズキのSエネチャージとマイルドハイブリッドが該当)
②小型のモーターが加速の際のアシストを行うアシスト式(ホンダIMAとスバルのハイブリッドが該当)
③日産の1モーター2クラッチとホンダのi-DCDが該当するトランスミッションに組み込まれた駆動、発電を兼ねるモーターを持つ1モーター式。
④発電用、駆動用のモーターを持ち、孤高の燃費を誇るトヨタ車全般、ホンダのi-MMD、アウトランダーPHEVが該当する2モーター式。
今後の動向としては二つ目のアシスト式は費用対効果が見劣りし廃れつつあるが、その他の3タイプに関しては費用対効果も良好で、今後の発展も大いに期待できる。
クリーンディーゼルもマツダのSKYACTIV-Dを筆頭にランクルプラドやデリカD:5に搭載され、日本でも普及が進みつつある。特にマツダのSKYACTIV-DはNOx触媒を使うことなく日本の厳しい排ガス規制をクリアし、高価になりがちなディーゼルエンジンの低コスト化を実現した功績は大きい。
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実用燃費に優れる小排気量ターボは少ない
ガソリンエンジンの進歩も着実に進んでいる。代表的なのが「気筒数の削減まで含めた小排気量化を行い、削がれたパワーは過給機を加えることで補い、エンジンの小型化、軽量化も含め燃費と動力性能を同時に向上させる」というダウンサイジングターボだ。
VWが先駆けとなり、欧州で普及したダウンサイジングターボは、日本車の採用は遅れがちだったが、ここ数年でトヨタ、日産、ホンダ、スバル、スズキが参入。
特にステップワゴンに搭載される1.5L直噴ターボは実用域では2L NA以上のトルク感を実現しており、フィーリングは上々。しかし日本車ではドイツ車のように同等の性能を持つNAエンジン車以上の実用燃費を誇るダウンサイジングターボが少ないのが残念なところだが、新しい技術だけに今後の発展に期待したい。
ダウンサイジングターボの基盤にもなるNAエンジンの進化も見逃せない。特に注目したいのがヴィッツやカローラなどに搭載されるトヨタの1.3Lと1.5L直4 NAと、マツダのSKYACTIV-G全般が該当する高圧縮NAエンジンだ。
トヨタは通常のポート噴射、マツダは直噴という違いはあるものの、どちらも今では可変バルブタイミング機構の普及で珍しいものではなくなった熱効率に優れるアトキンソンサイクルやスムースな排気を助ける4-2-1排気管の採用などにより、高圧縮化に成功。パワーと燃費を同時に向上している。
エンジン本体以外の新技術も続々登場
またエンジンそのもの以外の燃費向上技術を小さくない効果をあげており二つ紹介したい。
1つ目は減速エネルギーをキャパシタに貯めるマツダのi-ELOOPと、12Vの鉛バッテリーと小型のリチウムイオンバッテリーに貯めるスズキのエネチャージだ。車は通常エンジンでオルタネーターを作動させ電装品が使う電気を発電するが、オルタネーターを作動させるロスは意外に大きい。そのロスを減速エネルギーの利用で減らすのがi-ELOOPとエネチャージで、エンジンの負担が減るため燃費に加え動力性能の向上すると、いいことづくめである。
2つ目はまだ聞き慣れない、プリウスやクラウンマジェスタ、レガシィなどに装備されるグリルシャッターだ。車は暖気運転が必要だが、プリウスのような燃費のいい車=熱効率の良いエンジンを積む車ほど余計な熱が出ないため、特に冬場は暖気に時間がかかる。その上冬場はヒーターが必要になるため暖気にさらに時間がかかり、暖気が終わらないとアイドリングストップができず、燃費が悪化するという悪循環が燃費のいい車ほど起きやすい。
そこでグリルを適度に塞いで走行風による「冷えすぎ」を抑制するというのがグリルシャッターの役割だ。グリルシャッターの冬場の効果は絶大で、特に短距離での使用での燃費の悪化を防ぐことができ、加えてグリルシャッターをふさげば空気抵抗も低減する。
このように自動車メーカーは燃費向上のため血のにじむような努力をしており、次の燃費向上技術がどんなものかも楽しみにしたいところだ。