日本のトラック市場で最多販売台数を誇るクラスが一般的に2トントラックとも呼ばれる小型トラックだ。その数は4ナンバーの小型貨物車と1ナンバーの普通貨物車を合わせた15年の実績値で13万台近い。2トントラックは積載重量2トン以下(車両総重量5トン以下)の車両であることから、多くの場合は普通自動車免許を取得している18歳以上であれば運転することが可能(17年6月17日までに施行される準中型自動車免許の導入後は車両総重量3.5トンに制限)。
2トントラックのアドバンテージはこうした免許制度の上だけではない。あおりの付いた平ボディからダンプ仕様、そして塵芥車など様々な用途に対応できることから幅広いシーンでの活躍が期待でき、さらに街中に点在するコインパーキングにも収まるボディサイズ(ロングボディなどは除く)であるため使い勝手がいいことも特徴だ。
この先も2トントラックに対する需要は増え続ける。その理由は、5兆円規模のネットショッピングが生み出す小口物流だ。超高齢社会・日本ではこうした電子商取引がさらに加速していくが、商品を手にするには配送業務が不可欠であるため、2トントラックは2020年以降も要の存在。よって事業者は総所有コストの観点から燃費性能のいいトラックを渇望することになる。各社ともすでにハイブリッドモデルを用意するが、今後はベースエンジンの燃焼効率をさらに高めながら、年々厳しさを増す排出ガス規制への対応も急務になる。
結論。「燃費・環境性能」ではキャンターが一番。SCR触媒によるNOx削減は将来の排ガス規制にもゆとりをもって対応可能。「安全性能」ではデュトロ。乗用車でも一部の車種にしか採用のないフュージョン方式で歩行者も検知する。「充実のサービス体制」ではユーザーからの信頼が厚いエルフとなる。
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三菱ふそうキャンター 2016年4月モデルチェンジ
10年11月に登場した8代目キャンターは、商用車世界初の6速デュアルクラッチトランスミッション「DUONIC」を搭載。新開発の3Lディーゼルターボ「4P10型」とBlueTecシステムによって、優れた環境対応能力と高い走行性能を両立させた。その後、12年5月にはDUONICの偶数段クラッチ側にモーターを内蔵した「キャンターエコハイブリッド」を発売。
今年4月には初のモデルチェンジを実施。進化した「DUONIC2.0」やアイドリングストップ機構との組み合わせにより重量車モード燃費値は、ハイブリッドモデル(12.8km/L)に迫る11.6km/L(クラストップ)を実現した。
キャンター主要諸元
仕様 | ハイルーフキャブ、標準ボディ・全低床 |
全長☓全幅☓全高(mm) | 4690☓1695☓2105 |
ホイールベース(mm) | 2500 |
車両重量(kg) | 2350 |
エンジン | 直4ディーゼルターボ |
総排気量(cc) | 2998 |
最高出力(ps/rpm) | 150/2840 |
最大トルク(kgm/rpm) | 37.7/1350-2840 |
トランスミッション | 6速MT |
重量車モード燃費値(km/L) | 11.6 |
最小回転半径(m) | 5.1 |
価格 | 429万9480円 |
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いすゞエルフ 2014年11月改良
AT限定免許で乗れる2ペダル式6速AMT「スムーサーEx」と、いすゞ独自の燃費技術「D-CORE」を採用した3Lディーゼルターボ「4JJ1-TCS型」をベースに、ハイブリッドモデルではクラストップの重量車モード燃費値13.0km/Lを達成する。このハイブリッドモデルには、昨年4月の改良時に静かに走れるEV走行モードが追加された。
また、販売台数の上では無視できない5速MTにも電子制御システムである「ECONOモード」を採り入れている点が最新型エルフの特徴。これは、車両負荷や道路勾配に応じてエンジントルクや加速度をマイルドに制御することで燃費消費を抑える機構である。
エルフ主要諸元
仕様 | 標準キャブ、標準ボディ |
全長☓全幅☓全高(mm) | 4685☓1695☓1960 |
ホイールベース(mm) | 2490 |
車両重量(kg) | 2210 |
エンジン | 直4ディーゼルターボ |
総排気量(cc) | 2999 |
最高出力(ps/rpm) | 150/2800 |
最大トルク(kgm/rpm) | 38.2/1400-2800 |
トランスミッション | 6速MT |
重量車モード燃費値(km/L) | 11.4 |
最小回転半径(m) | 4.5 |
価格 | 437万4000円 |
日野デュトロ 2016年4月改良
昨年4月の改良時に採用された「EPB」(電動パーキングブレーキ)と「VSC」(車両挙動安定装置)に加えて、今年4月の改良時には単眼光学式カメラとミリ波レーダーとのフュージョンセンサー方式による衝突被害軽減ブレーキ「プリクラッシュセーフティシステム・歩行者検知機能付」や「車両逸脱警報」などの先進安全技術をラインアップ中の多くのモデルに標準装備。より一層安全装備の充実化が図られた。
環境面でもトップランナーであり、03年にはクラス初のハイブリッドトラック「デュトロ・ハイブリッド」を発売。13年には日野自動車のハイブリッド・トラック&バスの累計販売台数が1万台を突破している。
デュトロ主要諸元
仕様 | 標準長、全低床 |
全長☓全幅☓全高(mm) | 4685☓1965☓1980 |
ホイールベース(mm) | 2525 |
車両重量(kg) | 2430 |
エンジン | 直4ディーゼルターボ |
総排気量(cc) | 4009 |
最高出力(ps/rpm) | 136/2500 |
最大トルク(kgm/rpm) | 40.0/1400 |
トランスミッション | 5速MT |
重量車モード燃費値(km/L) | 10.4 |
最小回転半径(m) | 4.8 |
価格 | 431万5140円 |
トヨタ、日産、マツダの2トントラックはOEM車
キャンター、エルフ、デュトロ、2トントラックの車種はこれだけなの?と少なく感じるが、基本的にはこの3車種。ただし、これらにはOEM車が存在する。キャンターは日産アトラス、エルフはマツダタイタン、デュトロはトヨタダイナがOEM車。2トンクラスで売れているのはキャンターとエルフで、この2車が圧倒的に人気だ。
1~2トンクラス貨物車の2016年4月販売台数
- 三菱ふそうキャンター:1426台
- いすゞエルフ:2524台
- 日野デュトロ:1414台
- トヨタダイナ/トヨエース:1474台
- 日産アトラス:512台
- マツダタイタン:146台