最近のスバル車はおとなしくなった、スバルらしさが少なくなった、と言った声に真っ向からぶつけたのがレヴォーグSTIスポーツと新型BRZ。スバルに期待する「MORE SPORT!」の声にストレートに答えた力作だ。
この秋発売予定の新型インプレッサを皮切りに、SGP=スバル・グローバル・プラットフォームと称する新規アーキテクチャの展開を開始、そして来年4月には富士重工業株式会社改め株式会社スバルへと社名変更が行われるなど、スバルは来るべき未来に向けての準備を着々と進めている。
SGPは現在のプラットフォームに対して低重心化と高剛性化を大きく進めており、その拡張性は将来のエレクトリック・パワートレーンの搭載も想定したものになっていると言う。
適価で扱いやすく高性能な4WDということで北米市場、特に東部での大人気に加えて円安の追い風も受けたスバルはここ数年、アウディをも上回る猛烈な利益率と共に業績も絶好調だったが、将来を見据えれば環境技術の道筋が見えないことに疑問を抱くところもあった。
直近では年初からの円高振れに英国のEU離脱ショックも加わり、と為替相場は不安定要素だらけでもある。
そこに来てSGPの展開はスバルにとってまさに救いの一手となり得るものだ。今年度中に米国工場でも生産を開始するこのプラットフォームに、開発を進めているだろうEV的な動力源が加われば、当面の経営リスクは軽減できるはずだ。
一方で、スバルは現状の人的資産を強化するアナログ面での改革も積極的に行っている。中でもユニークなのは技術本部全体の運転スキルを高め、車への動的な評価能力を底上げすべく、ドライビングアカデミー制度を社内に設けていることだ。
もちろん習熟度によって試験領域は異なるが、現在スバルでは専任のテストドライバーを置かず、このアカデミーを経験したエンジニアが中心となって新車開発の動的評価を行う体制を形成しつつあるという。
それらが具体的な形として現れ始めるのはもう少し先のことだろうか。と思いきやレヴォーグとBRZ、2車種のマイナーチェンジでは動的質感向上への意気込みがしっかり確認できる。
レヴォーグはこの4月に早くも2回目の年次改良を受けてC型へと進化。欧州輸出を受けて後席周りのパッシブセーフティー機能や静粛性、快適性の向上などを果たしている。
そのC型に新たに加えられたグレード「STIスポーツ」は、従来からのSTI銘柄が持つ走りのクオリティをレヴォーグのユーティリティと両立、さらにライン加装を実現してリーズナブルに提供しようという狙いのモデルだ。
とは言え、パワー&ドライブトレーンの仕立てに変更はなく、エンジンは1.6Lと2Lの直噴ターボ各々にCVTの組み合わせ。
エクステリアでは専用のメッキ加飾やマフラーカッターなどが用意され、内装ボルドーのレザーやステッチを多用しと、ルックスでの識別点はそんなところで、一見すると大きな変更点はないように見える。
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欧州プレミアムに迫る極上の乗り味
レヴォーグSTIスポーツ最大の見どころは変更されたシャシー周りにあると言えるだろう。チェリーレッドに彩られた専用設定のスプリングと組み合わせられるビルシュタイン製ダンパーは、フロント側にダンプマチックⅡを採用。
これはピストンとバルブの間にラバーピストンを設け、その非線形的な流量コントロールによってプログレッシブなダンピングコントロールを実現するものだ。主にメルセデスの採用例が多く、現行のA~Cクラスにも同様のシステムが用いられている。
合わせて、ステアリングギアボックスのクランプ板厚を増やし支持剛性を高めるなど、応答性の向上が図られた。
これらの変更によるフットワークの違いは、主に中高速域でのダイナミクスに現れているのだろうと思いきや、実は最も大きく変わっているのは低中速域での乗り心地だ。
細かな凹凸でのゆすりや突き上げは綺麗に丸められ、大きなギャップの乗り越えでも入力は一発で収束、車体は極力フラットに保たれるなど、その転がりは実に滑らかで上質感はグッと高められている。
サーキットスピードでの機敏な応答性や限界の高さを知るに、レヴォーグSTIスポーツの快適性との両立のレベルは相当に高い。他のモデルにも展開。STIスポーツを定着させていく目論見もあるというから、スバルの走りがより高いステージへと移行することが間違いなさそうだ。
レヴォーグSTIスポーツの受注は5月末から始まっているが1か月の時点で早くも1500台を超え、下取り車には輸入車が従来のレヴォーグのモデルに比べると多いという。2Lと1.6Lの内訳は55%対45%と若干2Lが多い。
レヴォーグSTIスポーツ比較表
レヴォーグ1.6STI Sport | レヴォーグ2.0STI Sport | |
全長☓全幅☓全高(mm) | 4690☓1780☓1490 | 4690☓1780☓1490 |
ホイールベース(mm) | 2650 | 2650 |
エンジン | 水平対向4気筒DOHC ターボ |
水平対向4気筒DOHC ターボ |
排気量(cc) | 1599 | 1998 |
最高出力(ps/rpm) | 170/4800-5600 | 300/5600 |
最大トルク(kgm/rpm) | 25.5/1800-4800 | 40.8/2000-4800 |
車重(kg) | 1550 | 1560 |
サスペンション | ストラット/ ダブルウィッシュボーン |
ストラット/ ダブルウィッシュボーン |
JC08モード燃費(km/L) | 16.0 | 13.2 |
価格 | 348万8400円 | 394万2000円 |
レヴォーグ価格表
1.6GT EyeSight | 277万5600円 |
1.6GT EyeSightスタイル | 290万5200円 |
1.6GT-S EyeSight | 305万6400円 |
1.6STI Sport EyeSight | 348万8400円 |
2.0GT-S EyeSight | 356万4000円 |
2.0STI Sport EyeSight | 394万2000円 |