ポルシェ911Rはまさにロードゴーイングレーサー。ベースになったのはGT3RSだがまず大げさな固定式リアスポイラーは外され、外観は普通の911。ただし、ルーフはマグネシウム、ボンネット、フェンダーはカーボン、サイドとリアウインドウはポリカーボネート製だ。
さらに見えない所では防音材は大幅に外されている。その結果、空車重量は1370kgでベース車両のレーシングカーGt3RSよりも50kgも軽い。しかし3996ccのフラット6はNAながら500ps/46.9kgを発生。
駐車場に止まっている911Rおとなしく無害に見える。インテリアは昔懐かしいスタンダード仕様でナビ画面やラジオのあるべき場所にはぽっかりと穴が開いている。(ただし、無料オプションで装備は可能)。
クラッチをはじめ、全てが軽い操作系にホッとして走り出すと、防音材を省略されたためにワイドタイヤ(245/35R20と305/30R20)からのロードノイズ、さらに巻き上げる砂利や降り出した雨の水滴までが耳に届く。
なんだか大昔のスバル360、もっと言ってしまえば70年ドイツの最初の911を思い出す。しかし、アウトバーンに乗ってスロットルペダルを踏み込むと、102mm×81.5mmのショートストロークエンジンの回転の上りはまるでレーシングマシーンのようだ。
あっという間に200km/hに達するが、後輪ステアが残されていることで、ハイスピードレーンチェンジでの安定性は頼もしい。
開発担当のブロイニンガーさんは「リア操舵システムは2kgだったのですが走りの楽しさと操縦安定性を確保するには必要と判断しました」と取捨選択の正しさを説明した。
とにかく911Rは走る楽しさを徹底的に追求したスポーツモデルで、銀行口座に2629万円の可処分所得があったら是非とも欲しい。
すでに限定991台は売り切れとのことだが、既にドイツでは1億円の値がついている。こうした限定生産という販売政策は是非とも再考してほしい。