日本車の車名では長く連綿と続いてきたネーミングや、際立った個性も受け継いできた名車などを、特にビッグネームと呼んできた。
例えば、1950年代に生まれたクラウンやスカイラインはまさにビッグネームであり、ミドルサイズサルーンのアコードやマークXレガシィなどそうだ。
際立った個性、すなわち、SUVジャンルならトヨタのランクル三菱のパジェロもそうだろうし、ミニバン系ではオデッセイやエスティマなどが挙げられる。
最近では日本からそうしたビッグネームが姿を消し新しく生まれ変わったり、そのまま消滅したりすることも多くなった。
日産はかつての名車、サニー、ブルーバード、セドリック/グロリア、シルビアなどをすべて捨て去り、残されているビッグネームはGT-RとフェアレディZ、それにスカイライン、プレジデントのみ。
マツダのカペラやファミリアといった伝統のネーミングをアテンザ、アクセラに切り替えている。
そうした中で、このビッグネームを比較的大事にしてきたのがトヨタ。センチュリーに始まり、クラウン、マークX、カムリ、コロナ/カリーナはプレミオ/アリオンに変わったものの、カローラが残り、これに加え、ランドクルーザー、RAV4、エスティマなどのある。
アルファード/ヴェルファイア、ノア/ヴォクシー系もそろそろビッグネームの仲間入りとも言えそうだが、トヨタが捨ててきたネームは少ない。大物では、セリカ、スターレット、スープラなどだが、スープラは近々再登場する予定。
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ロー&ワイド!これが次期エスティマだ
まずはミニバンの革命児エスティマについての情報だ。6月に10年ぶりとも言えるビッグマイナーを受けたばかりだが、本来であれば17~18年のフルモデルチェンジに向けて動いていた。
トヨタ内部の資料によると、今から2年前の14年頃、トヨタミニバン系全てを俯瞰する会議が開かれ、整理、統合などを含め、将来のミニバン戦略が寝られた。
その中で、エスティマは次期プリウスαと競合するため、プリウスαを残すなら、エスティマは廃止という結論になったという。この時に、ウィッシュ、アイシスも廃止となる決定がされていた。
しかし、エスティマはビッグマイナーで延命し、さらに以前レポートしたように、FCV候補車として次世代モデルが始動。そして最近、20年のデビューに向け、本格的にGOサインが出されたということだ。
豊田章男社長の一言でさらに早まる可能性もあるというというからエスティマのファンにとっては大きな朗報となるに違いない。その背景には開発組織の再編によるカンパニー制の導入も大きく影響している。
ただし、最新情報ではFCVプランは水素タンクの搭載場所は厳しく、新開発の2Lハイブリッド一種での登場になるという。当然、プラグインハイブリッド仕様も検討中と言われ、東京オリンピックまでに「日本の風景を変える」という章男社長の目標を実現させる重要な車種となる。
とにかく、デザインにこだわる、というのが次期エスティマのテーマで、より豪華に実用的になっていくミニバンの中で、異彩を放つ事は間違いない。現行モデルよりも大幅に車高が低くなるというのが新たな情報だ。
2LハイブリッドでJC08モードをどこまで伸ばせるか、今から注目したいポイント。予想では25km/Lあたりとなりそう。
カローラにはBMW製3気筒ディーゼルか?
エスティマのように復活してくるビッグネームもあれば、今年7月の会議で開発中止の決定が下された車種もある。68年に登場したコロナマークⅡを源流とするマークXが19年で生産中止となることが決まったというのだ。
一時は1.4LターボクラスによるダウンサイジングしたFF車として計画され、さらに生き残るために、新たなFR計画も練られたが、一応、19年で中止し、別のミドルサイズサルーンを展開するかどうかを再検討する、という流れになったという。
同じように、トヨタのビックネーム、コロナ/カリーナの流れを組むプレミオ/アリオンも、6月のビッグチェンジが最後となり、幕を閉じることになりそうだという。
理由は17年に登場予定の次期カローラにある。次期モデルでカローラは大きく進化することが決定している。これまでカローラはグローバル展開と言いながら、日本仕様、北米仕様、アジア向け、ヨーロッパ向けなど、それぞれの国に合わせ、仕様が分かれていた。
それが、次期カローラでは日本仕様がなくなり、他のエリアと共通になる。これまで死守してきたボディサイズが拡大され、北米カローラ並みになる可能性もあるということだ。
つまり、5ナンバーではなく3ナンバーとなり、現行カローラよりも大きく、プレミオ/アリオンと同格かそれ以上に進化することになり、そのため、プレミオ/アリオン新型カローラに吸収されるカタチで消滅することになるというのだ。
ただし、17年のカローラ登場時なのか、併売後、様子を見ながら廃止していくのかは現時点で不明。いずれにしてもプレミオ/アリオンも近いうちにその役目を終えることになる。
次期カローラのポイントは多彩なエンジンバリエーションにあるという。ハイブリッドは2種が計画され、スポーツグレードにはエスティマ用に開発されている2Lの強力エンジンを使った新型を投入。ベーシックモデルはプリウスと共通の1.8Lハイブリッドになるということだ。
そのほか、1.2Lターボがベーシックモデルとなり、4気筒燃費型ターボとして設定される他、期待されるのが1.5LのBMW製ディーゼルターボがカローラにもコンバートされる。
既にヨーロッパではオーリスにこのBMW製ディーゼルが装着されているが、日本でもカローラでディーゼルが実現することが決定。
BMW製の1.5L3気筒ディーゼルは、パワーは116psと平均的だが、トルクが27.5kgmと太く、燃費もいい。同じエンジンを積むMINIクーパーDの場合、JC08モードで23.9km/Lという数値を記録する。しかも評価が高いのは、その仕上がりレベル。
次期カローラのデザインもオーソドックスなものから方針を転換し、若い世代を取り込む北米型に近い方向と言うから、これまでのカローラと違ったニューモデルとして誕生することになりそうだ。
カローラと同様、1960年代から続くセンチュリーの情報もある。これも来年、フルモデルチェンジされることになるが、5LのV12気筒エンジンを廃止、5L V8ハイブリッドになることが決まっている。FCV化は、さらに次の世代までということから、少し残念なフルモデルチェンジとなりそうだ。
トヨタのビックネームの未来は全て安泰というわけではないが、これまで同様、比較的大事にされていくというのは間違いなさそうだ。