1979年登場の初代アルトは「とにかく安い軽自動車を作る、具体的には当時の中古軽並の45万~50万円」という目標を掲げ、開発されたモデルだった。低価格化の手法としては装備品の簡素化などにくわえ、それ以上に大きかったのがかつてボンバン(ボンネットバン)と呼ばれていた商用車化することだった。
消費税導入以前の当時は軽乗用車にも物品税が課せられていたが、商用車であれば非課税。商用車ゆえに後席は狭いものの、「軽で後席を使う機会はそうないでしょう」と割り切った軽とすることで47万円という価格を実現し、大ヒットを飛ばした。
アルトで言えば三代目、89年に物品税の代わりに消費税が導入されてからは軽ボンバンのメリットは薄れ、ジャンルとしては廃れてしまったが、アルトで最安のアルトバンの価格は98年の5代目モデルまでほとんど変わらなかった。2004年の六代目で60万円台中ばまで値上がりしたものの、この年に価格の表示が5%の消費税込みとなったのに加え、後付けすれば10万円はするエアコン、前席2名分のエアバッグが標準装備化され、5ドアになったことを考えれば、この価格は据え置きに近いと考えていい。
現行アルトバンの価格は約70万円だが、79年を基準とすると現在は大卒初任給がほぼ倍になり、消費者物価指数も約1.4倍になっていることを考慮すれば、初代アルトに対し内容も飛躍的に充実している現行アルトバンの価格は激安だ。
歴代アルト価格推移
●初代(1979年5月)
アルト(商用のみ)47万円
●2代目(1984年9月)
アルト(商用のみ)49万円
●3代目(1988年9月)
アルトバン49万8千円(2シート)
乗用アルト52万9千円
●4代目(1994年11月)
アルトバン49万8千円
乗用アルト59万5千円
●5代目(1998年9月)
アルトバン49万8千円
乗用アルト64万8千円
●6代目(2004年9月)
アルトバン65万6250円
乗用アルト68万2500円
●7代目(2009年12月)
アルトバン67万7250円
乗用アルト73万2900円
●8代目、現行(2014年12月)
アルトバン69万6600円
乗用アルト84万7800円