これから2~3年後に量産化されるターボの新技術をマツダとホンダが採用するという。その目的はともにスポーツ。電気を使ったターボが車を変える。
ロータリー50周年の2017年に間に合うか?
ヨーロッパを中心にディーゼルエンジンやガソリンエンジンのターボが増えているのはよく知られているところだ。ガソリンエンジンの場合、ダウンサイジングターボとして、日本でもようやくそのウェーブが本格的に始まろうとしているが、実はそのターボ本体を製造しているのは日本の大手2社がその生産の約半数を占め、年間1000万台以上、近いうちに2000万台に達する勢いなのだ。
そうしたメーカーの技術会合の席で自動車メーカーの2社が、大手2社のターボメーカーの内の1社がH社の次世代スポーツのターボと、M社のあるエンジンのターボについて契約したと話しているのを確認したという。
M社というのは2社あるがもちろん三菱ではない。あのエンジンという表現を使っていることからも、マツダの新しいロータリであることは想像にかたくない。もちろんH社はホンダ。その2社が契約を結んだというのは三菱重工かIHIということになるわけだが、その会話の中に、H社への納入を担当している会社である、ということからホンダの次世代スポーツとマツダのロータリー用のターボは三菱重工が契約を勝ち取ったということになる。
それが何を意味するのかと言えば、三菱重工はここ数年、急激に膨張する自動車用ターボにおいて、新しい技術にチャレンジしている。2010年には電動スーパーチャージャーを開発。当時の「三菱重工技報vol.47」によると、排ガスやベルトにたよらないモーターによる電動チャージで応答性を高め、ターボラグの解消、燃費の改善、ドライバビリティの向上などが紹介されている。
これが最新の2015年の「vol.12」では自動車向け電動2ステージターボシステムへと進化している。ドライバビリティと燃費の改善が開発の狙いとなるが、こちらはダウンサイジング化が進み、ターボの高過給化に対応した新しいものだ。
構成としては、従来のターボと2010年に開発した電動スーパーチャージャーというかコンプレッサーを組み合わせたようなもので、ターボとこの電動コンプレッサーの2ステージで過給するというもの。過去、アメリカのターボメーカーが電動式のターボを開発。ターボ本体の同軸上にモーターを設置し、ターボラグの改善をねらったが、熱対策で足踏みしていた。
これに対し、この2ステージの場合、ターボと電動ターボが直結していないため、熱による問題もなく、すでに耐久試験も終了、量産化に向けて開発してきたシステムとの比較検討も行い、優れた燃費も証明。
特にこれまでの2ステージでウェストゲートを持ったターボに比べ、過渡応答性と呼ばれる、いわゆるターボラグやドライバビリティの改善はめざましく、低回転時のトルクの向上が従来の2.1秒に対し、1.2秒と半分近くまで良くなる。同時に燃費もJC08モードはもちろん、17年からヨーロッパで開始されるWLCTモードでも十分対応できる性能を持つことになるという。
そして、この性能に着目し、新たに契約したのがマツダのロータリーというのが濃厚だ。三菱重工はこの新しいターボを5社のメーカーにテスト用として供給していると伝えられている。特にマツダロータリーエンジンの課題として燃費とドライバビリティの改善がある。その点、三菱重工の電動2ステージターボは低回転のトルクの向上とレスポンスの改善、さらに燃費のために大量にEGRをかけた時でも42%ものトルクの向上を実現している。
パワーは300psで、軽量ボディで加速はケイマン並み
まさにロータリーの弱点をカバーできる能力をもっている。マツダが15年東京モーターショーで公開したRX-VISIONと同時に次世代ロータリーもSKYACTIV-Rと命名し、その存在をアピールしたが、今回公開されたRX-VISIONクラスのサイズなら、求められる性能は相当高い。
ポルシェ911までとはいかないまでもボクスター程度はほしい。そうなると、パワーは300ps以上、トルクも40kgm以上。しかしこの2ステージターボなら問題ないし、燃費も大きく改善できる。高回転域では電動ターボは使用しないで通常のターボのみが働く。
これはロータリーエンジン復活のキーとなるシステムともいえる。マツダは重くなることを嫌い、ハイブリッド化を断念したといわれていたが、何らかの形で「電動化」は必要とも語ってきた。RX-8の後継とも言えるRX-VISION、次期RX-9は間違いなく動き始めるはずだ。
ホンダは1.5~2Lターボ。新世代ターボは300ps級
もう一社、次世代スポーツエンジン用として契約したと思われるホンダ。次世代スポーツユニットといえば今やS2000後継車しかない。これまでの情報ではシビックタイプRの2Lターボを使うことが有力だったが、これから2~3年後に出るスポーツカーが単純に速いだけではまずい。
だからといってNSXほど高価ではなく、ミドルサイズスポーツとして成立させるとなると、やはり1.5~2Lのターボ。今回の三菱重工の電動2ステージターボなら、少なくとも燃費とトルクの問題を一気に解決できる。BMW i8は1.5L3気筒ターボとモーターの組み合わせだが、エンジンで231psある。
そのくらいは当然可能だし、1.8Lあたりで300ps以上というのも問題ない。次期iS2000はミッドシップであることも決まった。そして、エンジンもほぼ方向性は決まったと見ていい。
正式に契約したとなれば、ホンダも本格的に動き出す。2016年から始まる新しいターボ技術が新たなスポーツカーを生み出すことになる。まさに新しい時代が幕を開ける。これからこの2車から目が離せない!
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