4月1日に日産自動車の社長に就任する西川氏は1953年11月14日生まれの63歳。実は1954年3月生まれのゴーン氏とは日本的に言えば、「学年は同じだけど一つ年上」。けっして若返り人事ではない。
西川氏は77年3月に東京大学経済学部を卒業し日産自動車に入社したプロパー。辻社長時代には役員秘書を務めるなど、ゴーン体制以前から経営の中枢に関わるエリートコースを歩んできた。
ゴーン体制下では2003年には常務執行役員、2005年6月には取締役副社長となり2011年6月以降は代表取締役副社長と順調に出世し、昨年11月には、三菱自動車会長を兼任するゴーン氏とともに日産の共同最高経営責任者(CEO)に就任した。
ゴーン体制となって以降は常に経営の中枢部で重要な仕事を任されてきたことからもわかるように、ゴーン氏の信頼も厚く、ゴーン体制を引き継ぐ経営リーダーとしては超がつくほど順当な人事だったと大方の人は見ている。
さて西川新社長のもと、日産は車作りをどのように舵取りしていくことになるのだろうか。
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急激に日産の方向性が転換することはない
このように西川新社長はゴーンイズムを順当に受け継ぐ後継者と言えるだろう。
さらに言えばゴーン氏は社長の座は退くものの、4月以降も代表権を持った会長という立場にある。
現時点で会長、社長、CEOを兼務するゴーン氏だが、4月以降は日産、三菱、ルノーの会長として経営全般を指揮することに変わりなく、そういった意味で西川新社長が4月以降、急激に経営の方向転換を図るということは考えにくい。
むしろ、ゴーン会長が中心となってまとめあげられるルノー☓日産アライアンスのグローバルでの経営方針を実行していくのがアライアンス各社の社長の役割となるのだから、独自色を打ち出すタイミングはまだまだ先になりそうだ。
そんな中、当然期待したいのは現在北米では市販を開始しているスカイラインクーペ(インフィニティQ60)の日本導入だが、500万円を超える2ドアクーペが日本国内でどの程度のニーズがあるのかが最大のポイントとなる。
新開発されたV6、3Lターボエンジンは大いに興味深いものだし、日本のファンにとっては期待したい1台だが、現実問題として405ps/48.4kgm仕様だと販売価格は550万~600万円級となる。
レクサスRCが月販平均200台に満たない現実を見ると、日産としてはスカイラインクーペの日本投入には慎重な姿勢を崩すことはできないだろう。
日本市場に向けては、ノートe-POWERで勢いをつけたe-POWER戦略が加速することは間違いない。
セレナe-POWERは既定路線だし、モーター式後輪駆動のシルビア後継ミドルクーペについては開発が進められているとの情報がある。
日本市場の活性化が西川社長のリーダーシップで加速していくことを期待したい。
- 日産が独自に開発したV型6気筒3Lツインターボエンジン。ハイパワー仕様は最高出力405ps、最大トルク48.4kgmを発揮し、とてもパワフル。
現在は北米仕様のインフィニティQ60に搭載されているが、ぜひ日本国内でもスカイラインクーペとして販売してほしいと期待している。チューニングの異なるローパワー仕様は304ps/40.8kgmを発揮する。