快進撃を続けるスバルでも過去に経営の屋台骨が揺らぐほどの「不幸な出来事」にしばしば見舞われた。
戦後のGHQによる財閥解体で旧中島飛行機から再出発したスバルの最大の悲劇とは、経営を支配する資本提携の相手が、日本興業銀行(現みずほ銀行)、日産自動車、米GM、そしてトヨタ自動車と目まぐるしく入れ替わったことだろう。
しかも、当時メインバンクだった興銀と同じ筆頭株主の日産との主導権争いがエスカレート。社内では生え抜き組が冷や飯を食わされるなど「技術ありて経営なし」という悲惨な状態が30年以上も続いた。
経営方針や役員派遣などの思惑の違い~業績は悪化し従業員のモラルの低下、84年には国の型式認定審査をパスするために「レオーネ」の車両重量をごまかして鉛を仕込んだ捏造事件が発覚。
96年には「レガシィ」のリコール隠し騒動で業界初の過料処分を受けるなどの不祥事が相次いだ。
今でこそ黒字が続くが巨大な赤字を抱え、あいでいた時代が長かった。89年には300億円の赤字、07年には100億円以上の赤字だったが、リーマンショック後の10年度以降はV字回復した。
05年、GMが保有する富士重工の株20%を売却、その中8.7%をトヨタが取得し、08年には16.5%に増資。軽の自社生産終了という選択もした。
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現行スバル車の特徴と改善要望
インプレッサスポーツ/G4
特徴
昨年秋にフルモデルチェンジを受けたスバルの主力車種で、現行型はプラットフォームを刷新した。
走行安定性と乗り心地のバランスが優れ、機敏に曲がるスポーティな演出は控えめだが、車両が操舵角に正確に向きを変えて運転しやすい。乗り心地も路上の細かな凸凹を吸収して快適だ。
安全装備も充実させ、歩行者保護エアバッグも全車に装着した。内装は質を高めて後席の居住性も優れる。
改善要望
注意点は先代型に比べて斜め後方の視界が悪化したこと。1.6Lのリアスタビライザーを省いたのもスバルらしくない。1.6Lは動力性能も不足する。
- 全長4460☓全幅1775☓全高1480mm、ホイールベース2670mm(インプレッサスポーツ)
- エンジン:1.6L NA、2L NA
- 価格:192万2400~259万2000円
XV
特徴
最低地上高が200mmだから、悪路の凸凹を乗り越えやすい。その一方で全高を1550mmに抑えられたから立体駐車場を利用しやすい。
SUVでは安定性が優れ、居住性も後席を含めて快適だ。アイサイトバージョン3と歩行者保護エアバッグを装着して安心感を高めた。価格はインプレッサスポーツと比べると、108,000円の上乗せだから割安感が強い。
改善要望
車両重量が1400kgを超えるから、1.6Lでは動力性能が足りない。先代型に比べると後方視界が悪化した。フォレスターのアダプティブドライビングビームを装着して欲しい。
- 全長4465☓全幅1800☓全高1550mm、ホイールベース2670mm
- 最低地上高:200mm
- エンジン1.6L NA
- 価格213万8400~267万4000円
レヴォーグ
特徴
日本で買えるワゴンでは商品力が最も高い。走行安定性が優れ、乗り心地も満足できる。全幅1800mmを下回り、取り回し性もいい。
4WDを装着して安全装備も充実させながら、1.6Lターボは価格が割安だ。安全装備も充実させた。
改善要望
2Lターボの動力性能は高いが、アイドリングストップがつかない。1.6Lと価格を比べると、装備差を補正しても、排気量の拡大と4WDの上級化で約47万円高い。
フォレスターのターボは、4WDの機能が同じとはいえ自然吸気の16万円のアップに抑えた。1.6Lは1500回転以下で駆動力が落ち込む。
- 全長4690☓全幅1780☓全高1485~1490mm、ホイールベース2650mm
- エンジン:1.6Lターボ、2Lターボ
- 価格:277万5600~394万2000円
WRX STI/S4
特徴
2Lターボは実用域の駆動力が高く、高回転域の吹け上がりも活発だ。カーブでは適度に機敏に曲がり、下りカーブでアクセルペダルを戻すような操作を強いられても、後輪の設置性を損ないにくい。
S4の2.0GTアイサイトは、変更前に比べて後輪の接地性が少しゆるいが、安定性は十分だ。乗り心地も過度な硬さを抑え、後席の居住性も満足できる。
改善要望
ただしアイドリングストップは付けてほしい。またS4は安全装備が充実するが、STIはアイサイトバージョン3をつけられない。そろそろMT車にも対応すべきだ。
- 全長4595☓全幅1795☓全高1475mm、ホイールベース2650mm(WRX S4)
- エンジン:2Lターボ
- 価格:334万8000~411万4800円
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フォレスター
特徴
最低地上高は220mmを確保して、悪路の走破力が高い。その割に床が低く乗降性も優れている。前後席ともに床と座面の間隔が適度で、後席の足元も広いから4名で乗車しても快適だ。
全高は1700mmを超えるが、運転感覚が腰高ではなく、走行安定性も良い。最小回転半径は5.3mに収まる。
改善要望
ターボ自然吸気の2Lと比べて、実質16万円の価格は上昇だから買得だが、アイドリングストップはない。
自然吸気は運転を楽しむSUVでは力不足だ。電動パーキングブレーキを装着して、クルーズコントロール作動時の自動停止状態を維持してほしい。
- 全長4595~4610☓全幅1795☓全高1715~1735mm、ホイールベース2640mm
- エンジン:2L NA、2Lターボ
- 価格:214万9200~312万8760円
レガシィB4/アウトバック
特徴
アウトバックは国産SUVでは最も快適だ。17インチタイヤ装着車は乗り心地が優れ、前後席共に頭上と足元の空間が広い。
シートの座り心地も上質に仕上げた。2.5Lエンジンの動力性能は平凡だが、実用回転域の駆動力が高く扱いやすい。最低地上高も200mmを確保した。これに比べてB4は特徴が乏しいが、長距離も快適だ。
改善要望
18インチタイヤを装着したアウトバックは、乗り心地が硬めに感じる。全長は4815mm、全幅はB4を含めて1840mmだから大柄だ。走行安定性は優れているが、車両全体に動きが穏やかで従来型の機敏な印象は薄れた。
- 全長4795☓全幅1840☓全高1500mm、ホイールベース2750mm(レガシィB4)
- エンジン:2.5L NA
- 価格:293万7600~347万7600円
エクシーガクロスオーバー7
特徴
ミニバンのエクシーガをベースにSUVへ発展させた。ワゴン風のボディはスバルのブランドイメージにも合致して、ミニバンの実用性とSUVの楽しさを兼ね備える。
アイサイトもバージョン2ながら備わる。機能や装備の割に価格が安く、以前のエクシーガと比べても、実質的に9万円ほど割安だ。
改善要望
ただしエクシーガの発売から約9年を経過したため、操舵に対する反応はXVなどに比べて緩く、後輪の接地性も下がる。
動力性能は実用面で不満はないが3500回転以下は物足りない。1/2列目シートは快適だが、3列目は窮屈で補助席に近い。
- 全長4780☓全幅1800☓全高1670mm、ホイールベース2750mm
- エンジン:2L NA
- 価格:275万4000~276万4800円
BRZ
特徴
後輪駆動のミドルサイズクーペとあって、狭く曲がりくねった峠道でも楽しく走れる。カーブでは車両の向きが確実に変わり、危険回避時には後輪が踏ん張る。
運転を楽しめて安心感も高い。2Lエンジンは高回転域の吹き上がりが機敏で、改良により実用回転域の駆動力も高めた。
改善要望
雰囲気が暗い。ロードスターのようなオープンモデルはなく、ストイックに峠道やサーキットを攻める印象だ。
そこが特徴でもあるが、価値観が一面的でユーザーに向けた間口が狭い。アイサイト、リヤビークルディテクション、アイドリングストップは一切装着されない。
- 全長4240☓全幅1775☓全高1315~1320mm、ホイールベース2570mm
- エンジン:2L NA
- 価格:243万~337万5000円