三菱が久々にワークス体制でラリーに挑んだ。10月23日から24日にポルトガルで開催された「バハ・ポルタレグレ500」に、三菱はアウトランダーPHEVで出場。ドライバーはダカール・ラリーウィナーの増岡浩、マシン開発および現地での技術支援は三菱のエンジニアが担当するまさにワークス体制での参戦だ。
アウトランダーPHEVは過去3年間、アジアクロスカントリーラリーに出ているが、それは三菱がマシンをプライベーターに提供する形の非ワークス活動。しかし、今回は09年のダカールラリー以来となるワークス体制。ラリーが行われたポルトガルでの注目度はバツグンだった。
バハポルタレグレ500は、FIAクロスカントリーラリー・ワールドカップの1戦に含まれるオフロードラリー。舞台は、スペイン国境に近い東部ポルタレグレ周辺の荒野で、路面はクロスカントリーラリーとしては比較的フラットだが、ジャンプや河渡りなどタフな区間も多い。2日間で4ステージを行い、計502kmを走行するスプリント志向の強い1戦だ。
アウトランダーPHEVは、市販車をベースに外装、ボディ、足回り、パワーユニットを競技用に改造したもの。基本的な仕様は今年のアジアクロスカントリーラリーに出場したマシンと同一だが、アジアで発生した問題点を解決するための改良がほどこされた。
チューンドPHEVが対面する最大の問題は、モーターの熱で温度が上がりすぎるとシステム保護のためセーフモードに入り、パワーダウンしたり、ストップすること。そのためバハ・ポルタレグレ仕様ではモーターの温度上昇性抑制のためオイルクーラーが装着されていた。
そのアウトランダーPHEVは、増岡のドライブでラリー開始から絶好調。FIAクラスにはEVのカテゴリーがないためナショナル(国内)クラスでの出場となったが、SS1で増岡はいきなりクラス2番手タイムを記録。SS2でも3番手タイムを刻み、初日をクラス3位で終えた。
そして、競技2日目も絶好調なスタートを切ったが、58km地点でマシンがストップ。トラブルの原因は小さなヒューズで、それを交換するとマシンは復活し、増岡は最終のSS4に復帰。クラス2位のタイムを刻んだ。途中の未走行区間に対し7時間が加算されたため結果はクラス19位に終わったが、それさえなければ2位は可能だっただろう。戦った相手が大排気量ハイパワーのレース専用マシンだった事を考えると、乗用車ベースのPHEVで増岡は大検討したと言える。
増岡は「トラブルは残念でしたが、マシンは想像していた以上に速かった。今回は三菱にとって久々のラリーでしたが、非常に多くの技術的な収穫があった。様々な路面を走るラリーは、最高の実験の場であることを再確認しました。来年もこの活動を続け、さらに拡大できればと個人的には思います」とコメント。誰もが気になるダカールラリー復帰に関しては「まだそういう事を考える時期ではなく、具体的な計画もありませんが、現在のような技術開発や改良を積み重ねていけば、いつかは実現できるかもしれないですね」と将来に希望を感じさせる言葉を口にした。
「バハ・ポルタレグレ500」三菱の参戦体制と戦績
・ドライバー:増岡浩(監督兼任)
・コ・ドライバー:パスカル・メモン
・マシン:アウトランダーPHEVラリーカー
・戦績:総合47位(48台中)、クラス19位(20台中)
・タイム:11時間45分47秒00