燃費というのはとても不確定要素が大きい。燃費燃費と言うけれど、燃費とはつまり「燃料消費量」のことで、日本では慣例的に「16.5km/L」のように、1Lの燃料で走行できる距離を表している。
カタログには現在JC08モードによって測定された燃費値が記載されている。元々JC08モード測定は燃費値を測定するためというよりも、排ガスを測定するために実施され、排ガス測定のために燃費消費量が測定されるため、副産物のようなもの。
一定の基準に沿った走行モードをシャシーダイナモ上で再現することで測定されるので、各車の燃費の良し悪しを判断する材料として活用されているというわけだ。
日本でカタログに記載された燃費値は当初「60km/h定地走行」だった。文字通り直線平坦路を60km/hで走行して燃費値を測定したもので、実際値を測定したもので、実際の交通状況とは大きくかけ離れたものだった。
1973年から「10モード」と呼ばれる市街地走行を想定した10の走行モードによる測定試験が採用され、多少は実走行に即した燃費値となったが、最高速度は40km/hとされており、流れの速い郊外のバイパスなどは考慮されていなかった。
1991年以降、この10モードに最高速度70km/hとする郊外道路の走行を想定した15の走行パターンを追加した「10・15モード」に切り替えられたが、それでもまだまだ現実の実燃費とはかけ離れた数値であった。
現在採用されている「JC08モード」は2011年からで、従前は暖気スタートのみだったものに冷間スタートが25%考慮されるとともに、より加減速が複雑になり、最高速も80km/hに引き上げられて実走行に近いものとなった。車種によっては10・15モード値から20%程度低い数値となるものもあった。
それでも各車で実走行燃費を測定すると、JC08モード燃費値に対し80%程度の数値となるケースが多く、まだまだ実態に即していないと評価されている。
しかし燃費というのものは走行条件によって大きく変化するものだ。毎日走る同じ区間でも、交通状況によって燃費値には10%程度の差が出ることは当たり前だし、同じ区間を同じ車で全く同じ交通条件で走ったとしても、ドライバーの運転の仕方によって大きく変わってくるものである。
熟練ドライバーと初心者ドライバーだったら、20%くらい実燃費が変わっても不思議ではないのだ。
だからこそ、どこかで割り切って、一定の基準で厳格に測定されたモード燃費が意味を成してくるとも言える。
何かの基準がなければ各車の燃費の良し悪しを比較することはできないからだ。だがその一方で、来年度から導入される、より実走行に近いとされる新規格「WLTCモード」にしても、やはりあらゆるドライバーの、それぞれの実燃費に沿うことは絶対に不可能なのだ。
基準が定められれば、自動車メーカーはそれにマッチさせた車両作りをしてその走行モードで最も燃費値が良くなるようになる。
逆に言えば、その基準とは異なる走り方が日常であれば、モード燃費値の良し悪しなどは意味をなさなくなってくる。
毎日通勤で高速道路を50km走っているという人ならば、高速巡航燃費に優れた車が「燃費のいい車」となり、ハイブリッド車よりもクリーンディーゼルの方が実燃費に優れているということもあるのだ。
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国内燃費測定モードの変遷
60km/h定地走行
平坦な直線60km/h一定で走行した時の燃費値を測定したもの
10モード燃費(1973年~1990年)
東京の甲州街道における市街地走行を想定した10の走行パターンを定めたもの。最高速度は40km/hとされた。停止状態からの加速、減速、信号待ちなどのアイドリング状態などが組み合わされる。
10・15モード(1991年~2011年)
先の10モードに加え、首都高速などの都市高速での走行パターンも加味した15モードを加えた計測モード。最高速度は70km/hとされた。同じ車でも10モード値に対し10%程度燃費値が低く表示される。
JC08モード(2011年4月以降)
より実走行の実態に合わせた走行モードとした。10・15モードに対して試験時間を2倍にし、平均速度を高めて加速時間を短縮。より急加速が求められるようになった。高速最高速度は80km/hに高められた。
また従来は温間スタートのみだったものが、初めて冷間スタートが盛り込まれた。エンジンが温まる前にスタートするもので、燃料が濃く、燃費が悪化するが一般的な使用条件では冷間スタートである。
WLTCモード(2018年より実施予定)
冷間スタート100%で最高速97.4km/h、加速度もより大きくなり、JC08モードよりもさらにに実走行に近い条件となる。国交省と資源エネルギー庁が実施するワーキンググループ発表資料によると、JC08モード燃費のいい車ほど悪化率が大きくなるとのこと。