水平対向エンジンの未来は暗い。直4ならシンプルにおさまるヘッド周りが、動弁系だけでも2倍近い手間。さらに、吸排気の取り回しがやっかい。触媒やターボどういうふうにまとめるか、エンジニアの頭を悩ませる。結果としてパッケージ的にはほぼ縦置き専用。汎用性に欠けるから、この面でもなかなかコストが下がらない。おそらく今の状態から新たに水平対向4気筒の開発を提案したら、どこのメーカーでも即座にボツになるだろう。
しかし、他のメーカーが絶対に手をつけないからこそ水平対向4気筒には素晴らしい価値がある。自動車がコモディティ化(平たく言えば白物家電化)すると言われて久しい。実際、低価格ゾーンの車は、燃費が良くて壊れなければOKといったユーザーが少なくない。だからこそ、どこのメーカーも自社製品のブランド確立に腐心している。
そんな似たり寄ったりのライバルを尻目に、水平対向4気筒エンジンならそれを搭載しているだけでもブランドとして際立っている。ポルシェが絶対に911をやめないように、水平対向4気筒こそがスバルのブランド価値の源泉となっているのだ。
だから、水平対向4気筒が生き残るためにはデメリットなんかほっといて長所だけを磨きこむ。具体的に言えば水平対向の魅力は何と言っても低重心なんだからそこを妥協なく徹底するのがいいのではないだろうか。